メガネは顔の一部です

Freakeconomicsラジオ版に興味深い話が紹介されているMostly Economics経由)。


中国の甘粛省で、オックスフォード大学のAlbert Parkミネソタ大学のPaul Glewweという2人の経済学者が実験を行った。実験の内容は単純で、視力の悪い小学生1500人に眼鏡をただで配り、別のコントロールグループ1000人と1年後の成績を比較したというもの。その結果、眼鏡を配った生徒はコントロールグループと比べて25〜50%の学力向上が見られたという。
発展途上国の10%の小学生が眼鏡を必要とすると言われているが、甘粛省では、必要とする子供のうち実際に保有しているのは2%に過ぎない。実験に使った眼鏡は一つ10ドルで、研究助成金で賄ったとのことである。そのように安価な眼鏡でも発展途上国の子供たちの学力向上に役立つ、というのがこの実験から得られた教訓ということになる。


だが、この話には思わぬ落とし穴があった。眼鏡を必要とする生徒の家族の多くが、実験で配られた眼鏡の受け取りを拒否したというのである。その数は462にも上った。拒否の理由は、眼鏡は一層目を悪くするという迷信であり、西側の学者からのただの贈り物に対する警戒心であり、古くからある四つ目を馬鹿にする風習*1であった。
実験を実施したParkや、Freakeconomicsのスティーヴン・ダブナーは、そこに米中の文化の違いを見る。米国では、セレブが眼鏡を掛けることは珍しくないし、目が悪くないのにファッションのために掛ける人さえいる。一方、中国ではセレブが眼鏡を掛けることはまず無い。ダブナーは、中国のセレブに眼鏡を掛けるように呼び掛けてこの番組を締めくくっている。


少し前は(あるいは今も)、眼鏡を掛けている日本人*2というのが一つのステレオタイプであったことを考えると、日本では中国ほど眼鏡に対する抵抗感は無かったと思われる。むしろ、伊達眼鏡という言葉があるように、ファッションのために眼鏡を掛けることさえ積極的に行われていたように思う。女性の眼鏡については最近まで抵抗感が強かったような気もするが、それも眼鏡っ娘ブームでかなり払拭されたように思われる。あるいはこの眼鏡に対する抵抗感の無さが、日本の教育水準を支える一つの要因だったのかもしれない。


なお、眼鏡のスターと言えば最近はペ・ヨンジュンが思い浮かぶが、ぐぐってみると彼は中国でも人気があるようだ(例:ここここここ)。あるいはこの韓流ブームが地方にまで広まれば、上記のような状況も解消していくのかもしれない。

*1:ぐぐってみると、実際にそういう体験をした人の日本語の作文があった。ちなみにタイトルのキャッチフレーズで有名な会社のHPには、こんなエピソードが紹介されている。

*2:それに出っ歯、カメラが付くことも多いが。