インフレ目標の0%と4%の違い

昨日のエントリでは、4%のインフレ率を維持してゼロ金利に陥るのを免れた豪州に関するトピックを紹介した。これは、恰もブランシャールの提言を実践したかのような形になっている。


では、目標インフレ率とゼロ金利に陥る危険性をもっと定量的に関連付けた研究はあるのだろうか? 実は、先月20日のエントリの最後に紹介したエコノミスト誌のFree Exchangeで、そのようなシミュレーションが紹介されている。以下は、そのシミュレーション結果を図示したものである。

これは、過去数十年に米国を襲ったのと同規模の経済ショックを与えた場合、ゼロ金利がどのくらいの期間続くかを、目標インフレ率別に見たものである。これによると、0%の目標インフレ率ではシミュレーション期間中の約14%がゼロ金利であったのに対し、1%の目標インフレ率では約9%、2%では約5%、3%では約1%までその割合が下がり、4%ではほぼゼロになる。
また、ゼロ金利が連続して継続する四半期の数も同時に点線で示されているが、目標インフレ率の増加と共に逓減していることが分かる。0%の目標では6四半期=1年半に及ぶが、4%では2四半期=半年まで短縮する。


なお、この図の出所はカンザスシティFRBのRoberto Billi and George Kahnの論文だが、そのさらなるソースはDavid Reifschneider and John C. Williamsの10年前の論文である。従って、今回の危機を受けて行なわれたシミュレーションというわけではなく、シミュレーションに用いた経済ショックも1966-1995年における共分散構造となっている。モデルはFRBの米国モデルを使用しているとの由。


Reifschneider=Williams論文は金利政策の時間軸についての図が有名で、各所で引用ないし言及されているが(例えばここここここ)、実はブランシャール論文を先取りする面もあったわけだ。