新・マエストロ

かつてアラン・グリーンスパンに冠せられた金融政策のマエストロという称号は、今やオーストラリアの中央銀行である豪州準備銀行(Reserve Bank of Australia=RBA)総裁のグレン・スティーブンスこそ相応しい、という記事をデビッド・ベックワースが紹介している


既に報じられている通り、RBAは昨日利上げを実施し、政策金利を4.0%とした。これは、昨年の10月に利上げに転じてから、11月、12月に続く4回目の利上げとなる。もはや出口戦略どころか、既に景気の過熱を抑える局面に入っているわけだ。


ベックワースによると、早くも今年の1/18にスコット・サムナーがRBAを称賛するブログエントリを書いている。以下は該当部分の引用。

Interestingly, I know of only one country that stayed away from the ever lower inflation obsession of the major central banks. The Bank of Australia. Australia had about 4% inflation in their GDP deflator and 7.4% NGDP growth between 2000:2 and 2008:2. With a much higher inflation and NGDP trend rate going into the crisis, they we able to avoid the zero interest rate bound. And by the way, for those who think nominal shocks don’t explain real events like the recent recession, Australia was the only major developed economy to avoid a recession last year. Indeed they haven’t had one since 1991. They are called ‘the lucky country,” but I have argued that their culture lacks our puritanical obsession with inflation. Perhaps each member of our FOMC should drink a 6-pack of Fosters before their policy meetings.

TheMoneyIllusion » There’s one country that took Andy Harless’s advice

(拙訳)
興味深いことに、主要中央銀行の中でインフレ率を低めるという強迫観念に囚われなかった国を私は一つしか知らない。それは豪州だ。2002年第2四半期から2008年第2四半期に掛けての豪州のインフレ率はGDPデフレータで見て約4%であり、名目GDP成長率は7.4%だった。危機を迎えた際に他国よりも高いインフレ率と名目GDP成長率を維持していたお蔭で、彼らは金利のゼロ下限に達することを免れた。ちなみに、今回の景気後退のような実質ベースの経済の動きは名目ベースのショックでは説明できないという人たちのために付言しておくと、豪州は昨年景気後退を免れた唯一の先進国経済だ。実際のところ、彼らは1991年以来景気後退を経験していない。彼らには「幸運な国(the lucky country)」という俗称が与えられているが、私に言わせれば、彼らの文化からは、我々のような清教徒的なインフレに関する強迫観念が欠落している。ひょっとすると、我が国のFOMCの各メンバーも、政策決定会合の前にフォスターズの6本詰めを引っ掛けるべきなのかもしれない。

これは2/12の例のブランシャール論文の1ヶ月近く前のブログ記事だが、4%のインフレ率の維持によって危機の際にゼロ金利下限をヒットするのを避ける、という同論文の趣旨を、豪州という実例の紹介で奇しくも先取りした形になっているのが面白い。