ニッポンの医療保険は(Wow×4)米国が羨む(Yeah×4)

ちょうど10年前の今日に発売されたこの曲のフレーズをもじったタイトルにしてみたが*1、ディーン・ベーカーが9/7のブログエントリで、同日のワシントンポストの記事を引きながら、日本の医療保険制度を称賛している


ベーカーが特に気に入ったのは、記事中の池上直己・慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授の以下の言葉。

"more than one-third of the workers' premiums are used to transfer wealth from the young, healthy and rich to the old, unhealthy and poor."


(拙訳)
「雇用者の保険料の三分の一以上が、若くて健康で金持ちの人から、高齢で病気がちで貧しい人への所得移転に使われている」


これについてベーカーは以下のように評する。

That's a striking statement. Fire insurance transfers wealth from people who don't have house fires to people who do. Car insurance transfers money from people who don't have car accidents to people who do. This is the basic concept of insurance. It protects people from bad events, transferring money from people who don't have bad events to those who do. In other words, this quote is telling us that Japan's health insurance system is operating like a health insurance system.


(拙訳)
これは驚くべき発言だ。火災保険は、住宅火災を経験していない人から経験した人への所得移転である。自動車保険は、自動車事故を経験していない人から経験した人への所得移転である。このことは、保険の基本概念である。保険は、不幸な経験をしなかった人から経験した人にカネを移転して、不幸から人々を保護するものなのだ。言い換えれば、上記の引用は、日本の医療保険制度は医療保険制度のように機能していることを伝えている。


ただ、このワシントンポスト記事は、日本の医療ないし医療保険制度が薔薇色だと誉めそやしたわけでは決してない。その点について、ベーカーは続けて以下のように書いている。

The article is also quick to tell readers that Japan's system may be unsustainable. Its subhead is: "aging population could strain system." It is worth noting that Japan's population is already far older than the U.S. population. If the United States had the same age distribution as Japan, its health care costs would almost certainly already be above 20 percent of GDP, compared to the current 17 percent.


(拙訳)
この記事は、日本のシステムが維持不可能であることも強調している。その副題は、「高齢人口がシステムを軋ませる」というものだ。日本の人口構成が米国よりもはるかに高齢化していることには注意すべきだろう。もし米国の年齢構成が日本と同じならば、その医療コストはほぼ間違いなくGDPの20%を超えているだろう。ちなみに現在は17%である。


なお、このワシントンポスト記事は時事ドットコムでも紹介されている。また、日本の医療関係のブログでは、ここここで取り上げられており、後者では「非常に正確な内容」と評価されている。

*1:…約1年前に似たようなタイトルのエントリを書いたが。