マンキューの医療費論

マンキューが公的保険反対の論説をNYTに書いた(彼のブログエントリ経由)。その主張は大まかに言って2点ある。一つには、税金をバックにした公的保険と民間保険とではフェアな競争にならない、ということ。もう一つは、公的保険が独占的な買い手として振舞うことによって医療費が下がるとしても、それは供給側に望ましくない歪みをもたらす、ということ。


前者の論点は、彼が以前ブログでクルーグマンを批判した時の主張と同じである。後者の論点は、ブログでは6/24エントリで取り上げている。ここで彼は、公的保険が独占者として医療価格を引き下げることを、医療関係者に特別の所得税を課して、それを他の人たちに分配することになぞらえている。


ちなみにこの6/24エントリで彼は、

  • 米国では医者の高い教育費が医療費に含まれていない点
  • 近年の熟練労働者と非熟練労働者の所得格差拡大という傾向を無視して、医療関係者の所得のみ押さえ込もうという動きの問題点

も併せて指摘している。
このうち医者の教育費の問題については、The Baseline Scenarioでジェームズ・クワックが反応しておりOECDと米国の医者の所得差を考えれば、高いといっても2年の勤務で元が取れるレベルの話ではないか、と反論している。また、マンキューが、医者が所得が高いほど長時間働き、かつ数も多くなると指摘したことについて、医者の生産性は労働時間で決まらないし、今問題なのは一部で医療の過剰サービスが生じていることなのだ、また、OECDの平均に比べ人口当たりの医者の数が少ないのは米国医師会が制限しているためだ、と反論している。