生産的な投資への経路の短縮:マラウイでの農業資材フェアと現金給付の実証結果

というNBER論文が上がっているungated版(1年前のWP)へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Shortening the Path to Productive Investment: Evidence from Input Fairs and Cash Transfers in Malawi」で、著者はShilpa Aggarwal(インド商科大学院)、Dahyeon Jeong(世銀)、Naresh Kumar(同)、David Sungho Park(KDI国際政策大学院)、Jonathan Robinson(UCサンタクルーズ)、Alan Spearot(同)。
以下はその要旨。

While cash transfers consistently show large effects on immediate outcomes like consumption, limited access to markets may mute their impact on productive investment. In an experiment in Malawi, we cross-cut cash transfers with an "input fair," designed to reduce transport costs to access agricultural inputs. Cash alone increases investment by 27%, while the joint provision of cash and the input fair increases investment by about 40%; thus, the incremental effect of the input fair is equivalent to about a 50% increase compared to the effect of cash alone. Input fairs alone were ineffective.
(拙訳)
現金給付は消費のような即時的な結果には一貫して大きな効果を示すが、生産的な投資への影響は、市場へのアクセスが限られていることで減殺される可能性がある。マラウイでの実験において我々は、農業への投入財にアクセスする輸送コストを減らすように設計された「農業資材フェア」を現金給付と組み合わせた。現金だけで投資は27%増加し、現金と農業資材フェアを組み合わせて提供すると投資はおよそ40%増加した*1。従って、農業資材フェアは、現金だけの効果に比べておよそ50%相当の増加効果を持つ。農業資材フェアだけでは効果は得られなかった。

WPによると、実験対象はマラウイの300の地方農村で、種付けの直前に半数の家計にNGOのGiveDirectly*2から平均500ドルを給付したとの由。農業資材フェアは、農家に近い場所(大半は学校)で、地元の小売業者Agoraと提携して予め決められた日に実施したとのこと。
フェアだけの処置群では、農業資材を購入した農家は3%、平均支出額は約0.5ドルに留まったとの由。一方、現金給付も同時に受けた処置群では、それぞれ9ポイント、3.45ドル増えたという。買った人の購入金額は約33ドルと、50kgの化学肥料1袋の約28ドルをやや上回ったとの由。購入した資材はほとんど(金額で95%)が化学肥料だったとのことで、肥料の購入金額は31ドルと、現金を受け取らずにフェアに来た対照群の28ドルより3.3ドル多かったという。
現金給付やフェアが無くても肥料を購入したであろう人を考慮に入れた分析では、現金給付は肥料の使用割合と購入金額を、純粋な対照群(=現金もフェアも処置されていない群)の85%、19ドルからそれぞれ5ポイント、4.91ドル増やし、フェアと組み合わせると購入金額はさらに4.05ドル増えたのことである。

*1:WPの要旨では、この数字は現金だけは25%、組み合わせで効果は倍増、となっている。

*2:GiveDirectly - Wikipedia