気候変動の金融をどう考える?

というNBER論文が上がっている(H/T Mostly Economics)。原題は「What Do You Think About Climate Finance?」で、著者はNYUのJohannes Stroebel、Jeffrey Wurgler。以下はその要旨。

We survey 861 finance academics, professionals, and public sector regulators and policy economists about climate finance topics. They identify regulatory risk as the top climate risk to businesses and investors over the next five years, but they view physical risks as the top risk over the next 30 years. By an overwhelming margin, respondents believe that asset prices underestimate climate risks. We also tabulate opinions about the correlation between growth and climate change; social discount rates appropriate for projects that mitigate the effects of climate change; most influential forces for reducing climate risks; and, most important research topics.
(拙訳)
我々は861人の金融関係の学者、専門家、公的部門の規制担当者、政策エコノミストに対して、気候変動の金融をテーマにサーベイを行った。彼らは、企業と投資家にとって規制リスクが今後5年の最大のリスクとなるが、今後30年では物理的リスクが最大のリスクとなるとした。回答者の大多数は、資産価格が気候変動リスクを過小評価していると考えていた。我々はその他に、成長と気候変動の関係、気候変動の影響を緩和するプロジェクトに適切な社会的割引率、気候変動リスクを削減するのに最も影響力のある方策、および、最も重要な研究トピックをまとめた。

SSRNでungated版が読めるが、それによると

  • 株式市場については60%、不動産市場については67%、保険市場については42%の回答者が価格が気候変動リスクを十分に織り込んでいない、とした。正しく織り込んでいるとしたのはそれぞれ21%、17%、25%、過剰に織り込んでいるとしたのはそれぞれ3%、1%、2%。
  • 気候変動リスクを緩和する政策は主に好況時にペイオフするか、主に不況時にペイオフするか、それともいずれの時期も同等にペイオフするか、という質問に対しては、それぞれ32%、13%、55%の回答。
  • 気候変動の影響を緩和するプロジェクトに適切な社会的割引率は、リスクフリーレートが4%、リスクプレミアムが3%。
  • 気候変動リスクを削減するのに最も影響力のある方策のトップ5は、炭素税(52%)、機関投資家(48%)、政府補助金(43%)、顧客(41%)、非金融的規制(27%)(カッコ内は回答者の割合。ただし3つまで複数回答可)。
  • 最も重要な研究トピックのトップ5は、政府によるインセンティブの効果(35%)、金融市場での気候変動リスクの価格付け(34%)、気候変動リスクのシステミックリスクへの影響(28%)、SRIの実質効果(23%)、新たな金融ツール(21%)(カッコ内は回答者の割合。ただし3つまで複数回答可)。