流動性リスクが重要になる時

「Liquidity Risk After 20 Years」というNBER論文が上がっている。著者はLubos Pastor(シカゴ大)、Robert F. Stambaugh(ペンシルベニア大)。
以下はその要旨。

The Critical Finance Review commissioned Li, Novy-Marx, and Velikov (2017) and Pontiff and Singla (2019) to replicate the results in Pástor and Stambaugh (2003). Both studies successfully replicate our market-wide liquidity measure and find similar estimates of the liquidity risk premium. In the sample period after our study, the liquidity risk premium estimates are even larger, and the liquidity measure displays sharp drops during the 2008 financial crisis. We respond to both replication studies and offer some related thoughts, such as when to use our traded versus non-traded liquidity factors and how to improve the precision of liquidity beta estimates.
(拙訳)
クリティカル・ファイナンス・レビューは、パスター=スタンボー(2003*1)の結果の再現をリー=ノヴィ・マルクス=ヴェリコフ(2017)とポンティフ=シンギュラ(2019)に委嘱した。両研究は我々の市場全体の流動性指標を上手く再現し、流動性リスクプレミアムについて同様の推計値を得た。我々の研究より後のサンプル期間において、流動性リスクプレミアムはむしろ増大し、流動性指標は2008年の金融危機時に急激な低下を示した。我々は二つの再現研究にコメントするとともに、それに関連して、我々の取引流動性要因と非取引流動性要因をいつ使うべきか、および、流動性ベータ推計の正確性をどのように高めるか、といった点についてのアイディアを提供する。

ungated版では、上述の最後の点について概ね以下のようなことが述べられている。

  • 流動性要因としては、非取引流動性要因が本来のもので、市場の流動性要因を捉えるように設計されている。取引流動性要因はマルチファクターモデル用(マルチファクターモデルのファクターは取引できなくてはならないので)。
  • 流動性要因は、流動性ショックが小さい通常時はあまり効かないが、金融危機時など流動性ショックが大きい時に効いてくる。その効果により、金融危機時には危険資産の相関が高まる。また、そのため、流動性ベータを計測するのは2008年のような金融危機を含む方が良い。実際、今回の再現研究ではその時期を含んだために流動性リスクをより明確に観測した。

*1:cf. WP