一般に広めたい5つの経済学用語

をノアピニオン氏がブルームバーグ論説で挙げている

  1. 内生性
    • 相関関係と因果関係は違う、ということは誰もが知っているが、なぜか忘れがちである。この言葉はそれを覚えておくのに役立つ。
    • あることが原因か結果か(もしくはその両方か)分からない時には内生的である。
      • 例:大卒の人が収入が高いのは学歴のお蔭か、それともそもそも賢くて勤勉でコミュニケーション能力のある人が大学にいくのか?
    • 結婚を長続きさせる人々や健康に良い食品などのメディアの伝える話に対して、内生性はどうか、と考える習慣をつけるべき。

  2. 限界 対 平均
    • 経済学者は「限界的には」という言葉を良く使う。これは全体的な大きな効果ではなく小さな変化を指す。
      • 例:金融業界は大きすぎる、という議論において、擁護者は同業界は多大な価値を生み出していると言い、批判者は経済を損なうことなく同業界を縮小することは可能、と言うが、両者が共に正しいこともあり得る。金融業界は平均的には価値を生み出しているが、限界的には無駄を生み出しているかもしれない。
      • もう一つの例は、努力と生まれつきの才能。生まれつきの才能は平均的には重要かもしれないが、もう少し努力をすることによって大きな違いが生まれるかもしれない。

  3. 現在価値と割引
    • 将来手にすることにも今日時点で価値がある。株債などの金融商品は好例だが、グーグルで他の企業よりも安い給料で働く代わりに、将来の高収入につながる知識や技術や箔が得られる、というのもその例。
    • 現在価値はそうした価値を求める方法だが、その際には割引を行う。事物を今すぐ手にしたい人の割引率は高くなり、割引率が高いほど、学位や企業投資のように元を取るのに時間が掛かる事物の現在価値は低くなる。

  4. 条件付き 対 無条件
    • 一般的に雨の確率は低くても、空に黒雲があれば高くなる。この場合、雨の無条件確率は低いが、黒雲がある場合には条件付きとなり、その確率は高くなる、と経済学者は言う。
    • 寿命もその例。中世の平均寿命は35歳程度と言われるが、それは乳幼児死亡率が高かったため。成人まで生き延びた後の条件付き平均寿命の当時と現在との差は、無条件の平均寿命の差ほど大きくないだろう。

  5. 総体的
    • 個人にとって可能なことが、全員にとっても可能なわけではない。例えば医者になるのは個人のキャリアパスとしては良いことだが、一国が抱えることが可能な医者の数には限りがあり、全員が医者になれるわけではない。経済学者は、個人では可能なことも総体的には可能ではない、と言う。
    • 債務もその好例。個人レベルでは借金をして支出することは富を減らすが、総体的には債務は全世界の富の価値を減らすわけではない。というのは、ある人の債務は別の人の資産となるからである。自分の人生を考える場合は個人の観点から考えることに意味があるが、政府の政策を考える場合には総体的に考えることが重要である。