均衡実質金利とテイラールール

ジョン・テイラーが、PIMCOのPaul McCulleyが書いた最近のニューズレターから以下の一節を自慢げに引用している

…for me, it is so befuddling that the Fed, and thus the markets, still clings – even if reluctantly – to one man’s estimate of an “equilibrium” real fed funds rate, made in 1993: John Taylor, who assumed it to be 2%….I’ve got to hand it to John, whom I’ve known and liked for a very long time: Twenty-one years on, and you are still hardwired into the catechism of Fed policy!
(拙訳)
・・・1993年に一人の男が推計した「均衡」実質FF金利を、FRB、延いては市場が――渋々とはいえ――未だに墨守していることは、私には非常に悩ましいことのように思われる。ジョン・テイラーは、それを2%と仮定したのだった。・・・私はジョンを長いこと知っており好感を抱いているが、敬意を表せざるを得ない。21年経過して、彼は未だにFRBの政策の教義問答にハードコーディングされているのだ!

PIMCOは今の均衡FF金利は0%だと言い、サマーズら新・長期停滞論者はマイナスだと言うが、2%というのは今も適切な値、とテイラーは述べている。近年の先進国の停滞は政策の失敗のためであり、中立的な金利が変わった(“new neutral”)ためではない、というのがテイラーの見解である。


なお、ここでの2%の均衡金利とは、テイラールールで2%のインフレ目標がちょうど達成される実質ベースの金利を指している。テイラーの元論文の式で言えば、r = p + .5y + .5(p - 2) + 2でインフレ率p=2%、GDPギャップy=0%とした時のr-pに相当し、名目ベースではr=2+2=4%となる。従ってここでの均衡実質金利は、名目金利と実質金利が一致する水準、という通常の定義とは異なるが、それは、y=0%においてp=0%ではなくp=2%となることを暗黙裡に仮定しているためのように見受けられる。ただ、その伝でいくとp=0%に対応するyはマイナスとなり、仮にそれがy=-2%だとすると、通常の定義による均衡実質金利は0%となる。テイラーはその点を見落としているように思われる。