チリの大統領候補にもなったアンドレ・ベラスコ(Andrés Velasco)*1が、産業政策の再検討(Industrial Policy Reconsidered)と題したProject Syndicate記事を書いている(H/T Mostly Economics)。
以下はその概要。
- 米州開発銀行(IADB)が出版予定の下記のレポートでは、「生産的開発政策(productive development policies=PDPs)」という名の下に、中南米諸国に産業政策を呼び掛けている。この呼び掛けは一世代前ならば異端視されただろうが、今は常識に属する話となっている。
- 作者: Gustavo Crespi,Eduardo Fernández- Arias,Ernesto Stein
- 出版社/メーカー: Palgrave Macmillan
- 発売日: 2014/09/04
- メディア: ペーパーバック
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- PDPsには水平的政策と垂直的政策がある:
- 水平的政策は概ね受容されるが、垂直的政策は「勝者を選択しようとしている(picking winners)」という批判の的となる。しかし上述の例から分かるように、両政策の区分には曖昧さが付き纏う。即ち、政府がある種の技術者を育成したり、ある道路を建設したり、ある研究所を設立したりする時には、ある部門を他の部門より優遇しているのであり、事実上勝者を選択しようとしているのである。IADBは、そうした政策を、透明性と適切なチェックアンドバランスの下で、意識的に行うのが良い、としている。
- 垂直的政策は協調の失敗の解決にも役立つ。民間業者は道路が無いところにホテルを建てようとはしないだろうし、政府はホテルやロッジが無ければ遠方の景勝地への道路の整備を行おうとはしないだろう。
- こうした問題はもちろん是正されねばならない。しかしIADBによれば、現在の中南米諸国の政策当局者やアナリストは、羹に懲りて膾を吹くあまり、産業政策を一切締め出してしまった。問題は積極的なPDPsを行うか否かではなく、如何に実施するかなのだ、とIADBは言う。
- かつての産業政策と異なり、現代のPDPsは市場のインセンティブを排除するのではなく、市場の失敗の是正を目的としている。同時に、特定権益に絡めとられるという政府の失敗にも気を配っている。そのため、海外の成功例を真似するという通常のやり方ではなく、自分たちの身の丈に最も適した政策の実施を推奨している。
- 商品市況ブームが去った今、成長を持続するために、中南米諸国は新たな考え方と政策改革を必要としている。失敗の可能性の無い政策は存在しないが、IADBの推奨する政策は現時点で最良のものだろう。