多国籍企業の戦略と開発途上国に関する歴史的視点

というGeoffrey Jonesハーバード大学教授が執筆したWPをMostly Economicsが紹介している。原題は「Multinational Strategies and Developing Countries in Historical Perspective」。
以下はその要旨。

This working paper offers a historical analysis of the strategies of multinationals from developed countries in developing countries. The central argument is that strategies were shaped by the trade-off between opportunity and risk. Three broad environmental factors determined the trade-off. The first was the prevailing political economy, including the policies of both host and home governments, and the international legal framework. The second was the market and resources of the host country. The third factor was competition from local firms. The impact of these factors on corporate strategies is explored during the three eras in the modern history of globalization from the nineteenth century until the present day. The performance of specific multinationals depended on the extent to which their internal capabilities enabled them to respond to these external opportunities and threats.
(拙訳)
本稿では、先進国の多国籍企業開発途上国に展開する際の戦略に関して歴史的な分析を行う。ここでの主要な議論は、そうした戦略は機会とリスクのトレードオフによって形成された、というものである。3つの広範に亘る環境要因がそのトレードオフを決定する。一つ目は、その時点で支配的な政治経済環境であり、それには投資先国と母国の双方における政策や、国際的な法的枠組みが含まれる。二つ目は投資先国における市場と資源である。三つ目は地元企業との競争である。これらの要因が企業戦略に与える影響を、19世紀から今日に至るグローバリゼーションの近代史における3つの時代区分について研究した。各多国籍企業の業績は、こうした外的な機会と脅威に反応する内的能力がどれだけ備わっていたによって決定された。


論文の冒頭では、3つの時代区分ごとの機会/リスクと戦略が以下の表にまとめられている。

機会/リスク 第一次グローバル経済
(First Global Economy)
1850-1929
脱グローバリゼーション
(De-Globalization)
1929-1978
第二次グローバル経済
(Second Global Economy)
1978 -
政治経済環境 受け入れ体制良好;国際法帝国主義が西側企業を支援 没収;輸入代替;為替管理 自由化したものの、政府の主権と主張強し
市場と資源 低所得;文化的相違;豊富な天然資源 所得の限定的な収斂;外国資本の所有への制限 グローバリゼーション;部族主義;低賃金労働
競争 初期段階 国有企業;民間企業には制約 民間部門の成長
戦略 地元のエリート層をパートナーとして協力させる;母国の支援を求める;ロジスティックスに関する障害を克服する 投資引き揚げ;西側への投資;余儀無い形での交渉;ジョイントベンチャーと地元企業の参加 低労働コストにアクセス;地元の市場と政治に適応