金融危機と戦争

Mostly Economicsが、第一次世界大戦につながった1907年の金融危機を今次の金融危機になぞらえたハロルド・ジェームズプリンストン大学教授のProject Syndicate論説*1紹介している
以下はその結論部。

In 1907, in the wake of an epochal financial crisis that almost brought a complete global collapse, several countries started to think of finance primarily as an instrument of raw power that could and should be turned to national advantage. That kind of thinking brought war in 1914. A century later, in 2007-2008, the world experienced an even greater financial shock, and nationalistic passions have flared up in its wake. Destructive strategies may not be far behind.
(拙訳)
1907年、世界経済を完全な崩壊の瀬戸際まで追い詰めた未曾有の金融危機の後、幾つかの国は、主として自国に有利な形に展開でき、かつ、そうすべき荒削りの力として金融のことを考えるようになった。そうした思考様式は1914年の戦争を招いた。一世紀後、2007-2008年に、世界はその時よりもさらに大きな金融ショックを経験し、その後に国家主義的な激情が燃え上がった。破壊的な戦略も遠からず策定されるだろう。


この論説でジェームズは、英国が戦略的に(特に海軍の)軍事的優位とグローバル金融におけるリーダーシップの結合を図ったことを示した本として、以下を挙げている。

Planning Armageddon: British Economic Warfare and the First World War

Planning Armageddon: British Economic Warfare and the First World War


なお、コメント欄では、ジェームズのこうした見方に異を唱える意見が見られる(∵戦時のドイツに対しては金融的手段よりも海上封鎖や通信封鎖の方が効果的だった、当時の米英の政治経済的優位は今は存在しない)。

*1:cf. 過去のハロルド・ジェームズのProject Syndicate論説の邦訳:ここここ