こちらのブルームバーグ日本語記事で紹介されているように、海難事故では女性と子供を優先して救助する、という社会的規範が存在し、タイタニックではそれが守られたが、ルシタニアでは沈没に時間的余裕が無かったために守られなかった、という研究が少し前に出版された*1。
しかし、最近、その研究内容を否定する別の研究が出され、Economic Logic、Ideas Market(WSJ)、Core Economicsの各ブログで紹介されている(EconAcademics blog aggregator経由)。
以下は該当論文の要旨。
Since the sinking of the Titanic, there has been a widespread belief that the social norm of ‘women and children first’ gives women a survival advantage over men in maritime disasters, and that captains and crew give priority to passengers. We analyze a database of 18 maritime disasters spanning three centuries, covering the fate of over 15,000 individuals of more than 30 nationalities. Our results provide a new picture of maritime disasters. Women have a distinct survival disadvantage compared to men. Captains and crew survive at a significantly higher rate than passengers. We also find that the captain has the power to enforce normative behavior, that the gender gap in survival rates has declined, that women have a larger disadvantage in British shipwrecks, and that there seems to be no association between duration of a disaster and the impact of social norms. Taken together, our findings show that behavior in life-and-death situation is best captured by the expression ‘Every man for himself’.
(拙訳)
タイタニックの沈没以来、「女性と子供優先」という社会的規範によって海難事故において女性の生存の可能性が男性より高く、船長と乗員は乗客の救出を優先する、ということが広く信じられるようになった。我々は3世紀に亘る18件の海難事故のデータベースを分析したが、それには30カ国以上の国籍の15,000人以上の運命が記録されている。我々の研究結果は、海難事故に関する新しい構図を提供する。女性は男性に比べ生存確率は明らかに低い。船長と乗員の生存の可能性は乗客に比べ有意に高い。我々はまた、船長には規範的行動を強制する力があること、男女間の生存率の差は縮まってきていること、英国の遭難事故では女性がより不利になること、沈没に掛かる時間と社会的規範の影響には関連が無いように思われるということ、を見い出した。我々の発見を総合すると、生死に関わる状況における行動は「我先に」という表現で最もよく表わされる。
Core Economicsのブログ主は、タイタニックとルシタニアで人々の行動が分かれたのは、Freyらの研究で指摘されている沈没に掛かった時間ではなく、知識の差が一つの要因になっている、と指摘している。具体的には