軍事独裁政権の成立する確率

について分析した論文グアテマラのフランシスコ・マロキン大学の経済学部教授Andres MarroquinのブログUDADISIで紹介されているEconAcademics blog aggregator経由)。


以下は同ブログで紹介された論文の結論部。

In this paper we have analyzed the probability of a country of experiencing a military dictatorship, using a panel of 48 African countries over the period 1970- 2007. We found a number of results. Income per capita negatively affects the probability of a military rule, with some nonlinearities, in particular lower levels of income per capita increases the probability of having the military in office, whereas as long as it increases the probability gets smaller. Manufacturing and primary sectors are positively related with military rule, whereas the share of GDP deriving from natural resources is insignificant. Larger openness to trade negatively affects military rule. Polarization and fractionalization have opposite effects, the former increases the probability of a military rule, while the latter decreases it. External threat becomes significantly positive only when lagged. Finally, crude oil may price*1 negatively affect military rule, whereas agricultural price is usually non-significant.
(拙訳)
本論文で我々は、1970-2007年におけるアフリカの48カ国のパネルデータを用いて、ある国に軍事独裁政権が成立する確率を分析した。我々の見い出した結果は多岐に渡る。一人当たり所得は軍事政権の成立確率に負の影響を与えるが、それは幾分かの非線形性を伴う*2。具体的には、一人当たり所得がより低水準であることは軍事政権の確率を高めるが、一人当たり所得が増加するにつれその確率は小さくなる。製造業と第一次産業は軍事政権と正の相関関係があるが、天然資源からの所得がGDPに占める割合は有意ではない。貿易が開放的であることは軍事政権に負の影響を与える。分極化と分断化は逆方向の影響をもたらす*3。前者は軍事政権の確率を高め、後者は低める。外部の脅威は、ラグを取った場合のみ有意に正となる。また、原油価格は軍事政権に負の影響を与え、農産物価格は通常は有意ではない。

*1:sic.

*2:本文では、一人当たり所得の二乗項の係数が有意に負になった、と報告されている。

*3:論文では民族の分極化と分断化の指標のソースとして、ポンペウ・ファブラ大学の経済学者Marta Reynal-Querolのデータセットページにリンクしている。Reynal-Querolの論文関連論文によると、πiをグループiの人口比率として、分断化の指標FRACはランダムに選ばれた二人が違うグループに属している確率
  FRAC = Σπi(1−πi) = 1−Σπi2
として、分極化の指標Qは当該分布の二項分布からの規準化距離
  Q = 1−Σ{(πi−0.5)/0.5}2πi = 4Σπi2(1−πi) = 4ΣiΣi≠j(πi2πj
として定義している(結果的にQ/4は、ランダムに選ばれた三人のうち二人が同じグループに属し一人が違うグループに属している確率になっているように見える)。