2兆ドルの賭けの行方・その2

昨年の初め、2009年のFRBの利益が空前の規模に達したという話を取り上げ、「果たして今からまた1年後はどうなっているだろうか…」と書いた。


それから実際に1年経ったわけだが、既に日本語のニュースでも報じられている通り(ブルームバーグロイターWSJブログ原文])、FRBはさらに利益を伸ばし、国庫納付金は昨年から65%も増えた。


フェリックス・サーモンもこの話題を取り上げ、概ね以下のようなことを書いている。

  • 800億ドルなどという額を1年で稼いだ銀行はこれまで存在しないだろう。米国の一家計当たりに換算すれば700ドル以上になる。つまり、FRBは月に一家計当たり60ドルの額を稼ぎ、それをそのまま財務省に納付したわけだ。その費用は極めて安価であるし、しかも、FRBはいつでも新札が刷れる。
  • 800億ドルというのは、2004年の利益の4倍に相当する。その巨額さは、FRBのバランスシートがいかに巨大になったかを想起する良いきっかけだろう。また、金融政策が財政の資金需要に大きな影響を与え得ることも示している。


このサーモン記事を紹介したEconomix記事は、バーナンキは新たな非伝統的金融政策手段に乗り出すと同時に、財政赤字の削減もやってのけた、と評している。


というわけで、ジェームズ・ハミルトンのいわゆるバーナンキの2兆ドルの賭けは、2年目も成功裏に終了したわけだ。しかし、自己資本を超える利益を叩き出したということは、裏返せば債務超過に陥るリスクを取っている証左とも言える。そうしたダウンサイドリスクによって自己資本が毀損することは、まさに日銀について日本の経済学者や日銀自身が極めて警戒するところであり、日銀がFRBほど大胆になれない一つの理由となっている(もう一つのより大きな理由は、日本の金融システムは米国ほど危殆に瀕することは無かったので、そうした大胆な施策の必要が無かった、というもの)。確かに、バーナンキがこのまま勝ち続ける保証はどこにも無い。


果たして今からまた1年後はどうなっているだろうか…。