ギャグノン「日銀は100〜200兆円の長期債を購入すべし」

ピーターソン国際経済研究所のエコノミストFRBの勤務経験もあるジョセフ・ギャグノン(Joseph Gagnon)という人が提言したリフレ政策が、英米ブログ界でちょっとした話題になっている(Economist's Viewデビッド・ベックワースFree ExchangeBill WoolseyEconomists for Firing Larry Summersブラッド・デロングマシュー・イグレシアススコット・サムナー)。各ブログでの評価は概ね好意的で、デロングは冗談でエントリのタイトルを「ギャグノンをFRB議長に」としている。ただ、Free Exchangeは、ギャグノンの提言は経済学的に正しいとしても、政治的には実行不可能だろう、と述べており、サムナーやベックワースもその見方に同意している。


以下はその論文の前文の拙訳。

世界各国の政府と中央銀行は、2008年の金融危機に対して積極的に緩和的なマクロ経済政策を適用し、おそらく間違いなく第二の世界大恐慌を未然に防いだ。しかしながら、最近において、政策当局者はそうした刺激策を撤回する時期について話し始めている。現段階でこのように出口に焦点を合わせることは誤っている。現在の各種予測では、先進国での経済停滞は長期間続くことが示されている。我々は今、追加の刺激策を必要としているのだ。具体的には、主要先進国中央銀行は、公的ならびに民間の長期債務証券を合わせて6兆ドル購入することにより、長期金利をそうした政策が実施されない場合に比べて75ベーシスポイント低い水準に押し下げるべきである。この政策行動は、現行予測に比べ、次の8四半期でGDPを3%以上引き上げ、失業率を1〜3%引き下げるだろう。
追加刺激策なしでは、失業率は何年もの間均衡水準より高い位置に留まり、失われる所得と人々の苦難という形で世界経済に大きなコストをもたらすだろう。また、インフレ率が望ましい水準を下回っている現状では、過剰失業は招かれざる物価下落につながりかねず、そうした物価下落は景気回復の足をさらに引っ張り、レバレッジを下げるという必須のプロセスにも遅れを生じさせるだろう。
公的債務が高水準にあり、さらに増え続けていることに鑑みると、追加的な財政刺激策よりは、追加的な金融刺激策の方が望ましい。実際、金融刺激策は利払い費を減らすことにより公的債務の対GDP比率を減少させ、GDPを増やし、税収を上昇させ、より早期の財政再建の取り組みを可能にする。
以下に提示する近々に実施すべき具体策は、世界を物価安定を伴う確かな回復軌道に乗せ、2011年末までに経済活動を元の成長経路に戻す助けとなるだろう:

  • FRBは長期債務証券を追加で2兆ドル購入すべきである。購入証券の平均償還期間は7年とする。
  • ECBは主要政策金利を50ベーシスポイントまで下げ、この金利での銀行システムへの期間12ヶ月の無制限の資金供給オペを継続すべきである。また、長期債務証券を1兆ユーロ購入すべきである。
  • 日銀は今後2年で最低1%のインフレ率に戻す意図をより明確に宣言すべきである。平均償還期間7年の長期債務証券を追加で100兆円購入し、もしコアインフレ率が今後12ヶ月もマイナスに留まったら2011年も同様に100兆円購入すると約束すべきである。
  • BOEは、2000億ポンドの英貨建て長期債、もしくは通貨スワップで元利共にヘッジした同額の外貨建て長期債を追加購入すべきである。

資産価格バブルや金融市場での行き過ぎが再発することは、現在の環境では考えにくい。ただ政策当局者は、リスクを伴う金融活動が発生した場合に、規制監督手段を用いてそれを押さえ込む準備をしておく必要はある。