約束を破ったバーナンキ

Calculated Riskが10/4エントリでそう非難している


Calculated Riskが問題にしたのは、同日のロードアイランドでのバーナンキ講演の以下の一節。

Our fiscal challenges are especially daunting because they are mostly the product of powerful underlying trends, not short-term or temporary factors. Two of the most important driving forces are the aging of the U.S. population, the pace of which will intensify over the next couple of decades as the baby-boom generation retires, and rapidly rising health-care costs.
(拙訳)
我々の財政上の課題がとりわけ厄介なのは、その大部分が手強くかつ根本的な趨勢的な要因によるものであり、短期的ないし一時的な要因によるものではないからです。最も重要な2つの要因は、米国民の高齢化――この高齢化のペースはベビーブーマーの引退に伴い今後20年間は速まっていくのですが――と、医療費の急速な上昇です。


Calculated Riskがこの発言を批判している理由は、バーナンキCEA委員長を務めていた2005年には決してPAYGO原則を口にせず、それどころか財政赤字にも殆ど言及しなかった――言及したとしても肯定的にしか言及しなかった――ことにある。しかし、当時も構造的な財政赤字は存在していたし、ベビーブーマーが老いることも分かっていたではないか、というわけである。その上、バーナンキは住宅バブルを完全に見逃していたが、そのバブルのせいで現在は循環的な財政赤字も上乗せされている。


Calculated Riskは、

という3点を挙げて、厳しくバーナンキを批判している。



それに対しコメンターの一人は、この講演の模様を取り上げたNPR記事にリンクしつつ、学生相手のタウンホールミーティングみたいな感じのようだし、まさか量的緩和について話すわけにもいかなかったのだろう、とバーナンキを擁護すると同時にCalculated Riskを宥めるようなコメントを書いている
確かに、主催者がRhode Island Public Expenditure Councilという名前からし財政問題を扱う非営利団体だったことを考えると、財政問題を論じない訳にもいかなかっただろう、という気がする。


また、ここで紹介したように、財務省高官(ガイトナー)もFRBの政策に言及したりしているので、財務省FRBの相互不干渉もそれほど厳格なものではなさそうな気もする(尤もそちらはあくまでもブロガーとの懇談の場という非公式な会合での発言だったのに対し、今回のバーナンキの講演はFRBのHPにきちんと掲載されるような公式なものである、という大きな違いはあるが)。