リソルツ「ゴールドマン有罪に1000ドル!」

Mark Thomaが「相変わらずバリー・リソルツは優柔不断とは無縁のようだ」というコメントをつけてThe Big Pictureの4/23エントリを紹介している。以下にそれを訳してみる。

GS問題についてあなたが知らない(もしくは誤解している)10のこと
10 Things You Don’t Know (or were misinformed) About the GS Case

GS問題についての本当にひどい分析、いい加減な報道、そしてまるで裏付けの無い論評を見ると、恐れと憂鬱が混ざった気分に襲われる。
以下のリストは、私が、弁護士、市場観察者、クォンツ、そしてSECにコンタクトを持つ者としての知識を基にまとめたものである(注:これは私個人の見解であり、他の誰かの見解を代表するものではない)。

GS問題についてあなたが知らない(もしくはマスコミのせいで誤解している)10のこと
  1. これは勝てる見込みの乏しい訴追である:
    いいや、違う。これは勝てる見込みが非常に高い訴追だ。SECの訴状によると、訴追のある部分は確実なものだ。ポールソン社が実は売りポジションだったのに2億ドルの買いポジションを取っていると述べたことは、重大な虚偽の陳述だ。これはルール10b-5*1に該当し、それについてはとやかく言う余地は無い。それ以外のことはおまけだ。
     
  2. ロバート・クザミは凄い、本物の、徹底した、数々の賞を受賞した検察官だ:
    この男は本物だ。彼はテロリストのネットワークを潰し、マフィアを解体し、証券詐欺を検挙した。彼は今やSEC法務執行局長だ。彼は恐れを知らず、「並外れた勇気をもって進んで危険に身をさらし、司法省と国に直接的な貢献となる行動を取った」ことにより検事総長の殊勲賞を1996年に受賞している。
    銃や爆弾を使い命を奪うと脅迫する大量殺人犯を訴追し、とにもかくにも倒すことができるならば、大金持ちの銀行家やそのスプレッドシートが怖いはずもない。彼に照準を合わせられたウォール街の人に対する私の助言は次の通りだ:クザミに起訴されたなら、悪いことは言わないから、和解しろ。
     
  3. ゴールドマンは9000万ドル損したのだから、無実だ:
    これは民事事件であり、刑事事件ではない。従って、故意か否かは問題ではない。法律の文言に反したかどうかがすべてであり、何を考えていたか、および損益は関係ない。
     
  4. ACAはこの件の被害者だ:
    そうとは言えない。彼らは格付け獲得のゲームに積極的に参加していた。ポールソンとACAの管理者との間のポールソンの選択に関するやり取りを見てみよ。件の合成CDOには、取捨選択の末に55証券が加えられた。なぜだ?
    ACAがやっていたことは、格付け機関からトリプルA格付けを得るための工作だった。彼らの専門性(と呼んで良いならば)は、ムーディーズやS&Pから投資適格の格付けを得ながら、利回りを上げるためにジャンク債をどれだけ投入できるか正確に知っていることにあった。彼らは到底無実の団体とは言えない。
     
  5. これは一過性の事件だ:
    市場はまったくそうは見ていない。ゴールドマンの時価総額は15%も縮小した。SECの攻撃態勢、ゴールディからの大袈裟な反応、そして短期的な市場の評決。これらすべてのことは、この先まだ何かあることを示唆している。
    もしこれが一過性のもので、その先に懸念すべきことが無いのであれば、GSは小切手を書いておとなしく和解していただろう。彼らの反応(ある人に言わせれば過剰反応)はその理屈に反している。これは氷山の一角に過ぎず、問題となる合成CDOはまだまだある、と私は睨んでいる。
    そして、事はGSに留まらないだろう。ドイツ銀行、メリル、モルガンの連中も、今頃、自分たちの多岐に及ぶCDO取引をせっせと見直しているのではないか。
     
  6. 立件のタイミングが疑わしい:
    ただの偶然だろう。ウエルズ・ノーティス(SECからの法的執行の意図を示す通告*2)は8ヶ月以上の前のことだ。ホワイトハウスは告訴の時期そのものには関わっていない。それはもっと低いレベルの職員の決定事項だ。
     
  7. これは複雑な事件だ:
    これも違う。部分的には先進的なところもあるが、詐欺と虚偽の単純な事件だ。この事件の最も難しい部分は、何が「重要な削除」に当たるか、という点になるだろう。モーゲージ証券の選択に果たしたポールソンの役割は、重要かもしれないし、重要でないかもしれない。それは陪審員が判断を下すべき争点だ。しかしそれは複雑とは程遠い。
     
  8. 事件は証拠に乏しいように見える:
    訴状に書かれていることは、立件のために検察官が明らかにすべき最小限のことだけだ。電子メール、宣誓証言、尋問、電話記録などの検察官が押さえていてGSが知らないことは、まだ表に出て来ていない。訴訟の発見過程で、そうした証拠は徐々に明るみに出てくる(GSに対する他の調査がまだ控えているならば、出されないままとなる証拠もあるだろう)。
    この事件の検察官が誰かもう一度考えてみよう。彼の司法界での評判は、非常に徹底した、緻密かつ綿密な訴追人、というものだ。彼がウォール街で最大かつ最悪の投資銀行を相手に立件しようと決断したならば、我々のまだ知らない追加証拠を武器として隠し持っていることは請合っても良い。
    通常の場合、ある時点で、弁護士は顧客に、証拠には抗しがたいと伝え、和解を勧告する。それは訴訟が始まってから大体6-12ヶ月後だ。
     
  9. この事件は政治的なものだ:
    その言葉は良く聞くが、原因は、SECでの票決が党派で割れたためだ。その言葉は正確ではない。このことが意味するのは、事件が政治的なものである、ということでなく、弁護側の戦術として政治問題化された、ということだ。その2つには大きな違いがある。
     
  10. 私は弁護士では無いが、しかし…
    それならば証券の訴訟沙汰について知らないのに口を挟むべきではない。STF up*3をトールグラスに手酌で注いで、隅っこでおとなしく座っていたらどうだ。

GSが勝てない、つまり法廷で和解するか負けることに、私は1000ドル賭ける。賭けの相手は問わない。誰か受けて立たないかね? 私の金はもう預託されていて、貴君の参加を待つばかりだ。賭け金は勝者の選択する慈善団体に寄付するものとする。

*1:cf. ここ

*2:cf. ここ

*3:多分Shut the fuck upの略を7upに掛けている。