ダニ・ロドリックがProject Syndicateに「The Return of Industrial Policy」と題した論説を書いている(Economist's View経由)。そこで彼は、各国の最近の事例を紹介した上で、以下のように書いている。
The shift toward embracing industrial policy is therefore a welcome acknowledgement of what sensible analysts of economic growth have always known: developing new industries often requires a nudge from government. The nudge can take the form of subsidies, loans, infrastructure, and other kinds of support. But scratch the surface of any new successful industry anywhere, and more likely than not you will find government assistance lurking beneath.
The real question about industrial policy is not whether it should be practiced, but how.
(拙訳)
以上から分かるとおり、産業政策の採用の動きは、分別ある経済成長の分析者が常に知っていたことが公に認知された、という歓迎すべき動きを意味する。即ち、新しい産業の発展は、しばしば政府からの一押し(nudge)を必要とする、ということだ。その一押しは、補助金、融資、インフラ、そしてその他各種の援助という形態を取り得る。しかし、新規に成功したどこのどの産業においても、その表面を少し引っ掻いてみれば、政府の支援が影に隠れていることに気付くだろう。
産業政策の真の問題は、実施されるべきか否かではなく、どのように実施されるべきか、なのだ。
そしてロドリックは、産業政策に関する三つの原則を提示する。
- 産業政策は特定の政策の集合ではなく、雰囲気作りである。
- 産業政策には飴と鞭の双方が必要である。
- 産業政策の実施者は、産業政策は社会全体に奉仕するものであって、監督する官僚やインセンティブを受ける対象企業に奉仕するわけではないことを肝に銘じる必要がある。
また、ロドリックは、良く聞かれる批判に対し以下のように反論している。
The standard rap against industrial policy is that governments cannot pick winners. Of course they can’t, but that is largely irrelevant. What determines success in industrial policy is not the ability to pick winners, but the capacity to let the losers go – a much less demanding requirement. Uncertainty ensures that even optimal policies will lead to mistakes. The trick is for governments to recognize those mistakes and withdraw support before they become too costly.
(拙訳)
産業政策に対するお決まりの批判は、政府には勝者を見分ける能力はない、というものだ。もちろん政府にその能力は無いが、それは基本的に関係ない。産業政策の成否を決めるのは勝者を見分ける能力ではなく、敗者を去らしめる能力だ――後者はより難易度が低い。不確実性の存在は、最適な政策でさえ過ちをもたらすことを保証している。政府が成功するこつは、そうした過ちに気付き、それが金食い虫になる前に支援を引き揚げることだ。