菅直人が財務大臣になったのは良いこと

昨年12/8エントリで紹介した“ヴェブレン”君がそう吼えている

以下は氏の1/9エントリの拙訳。

日本:菅直人

菅直人が日本の財務大臣になったのはとても良い兆候だ。総理の鳩山と違って、菅直人は本当に頭が良いしリベラルだ。彼は政府の官僚を標的にすることによって名を上げた。日本では官僚がほとんどの政策策定を実際にコントロールしている一方、議会は基本的にはめくら判を押すだけで、独裁制を嫌う西側諸国に対する体裁を維持するために存在している。菅はその状況を変えようとして、自らのキャリアを当局との闘いに費やしてきた(実際のところ、民主党がなぜ彼を党首に選ばなかったのかは謎だ…)。ただ問題は、日本の政治家がほぼ役立たずであることだ(菅とその他数人を除く)。現実問題として、彼らは賢明な東大(東京大学)出身の官僚のお蔭でまだましなものになっている。…話が脇道に逸れた。
菅の声明によって円が下落したが(良い兆候だ)、日本人にとって本当に必要なことは、菅直人が日銀を率いることだ。ともあれ、翌日鳩山が彼を叱責し、菅は当初の発言を修正した。すると円が反発した! 馬鹿な話だ!
何にせよ、このことで僕が考えさせられたのは、日銀がこれまで犯して来て、今も犯しつつある政策上の重大な誤りが、日銀の首脳陣が蒙昧な米国のマクロ経済学の学部で教育を受けてきたこと、それによって標準的な正統経済学に取り込まれたことと、どの程度関係しているのだろうか、ということだ。
現在の日銀総裁白川方明は、デフレという単純な問題をどう解決すべきか皆目見当がつかないでいるが、シカゴで教育を受けた*1
日銀の副総裁*2である西村清彦は、1982年にイェールから経済学博士号を取得した。
もう一人の副総裁*3や政策委員会のメンバーのほとんどは、日本国内でのみ教育を受けているが、それでも最高位の3人のうち2人が米国のトップクラスの経済学の博士課程で教育を受けているわけだ! しかも、政策委員会メンバーのほとんどは東京大学や一橋といった大学の出身であり、それらの大学のホームページをざっと見てみると、代表的な教授陣がシカゴ、ハーバード、MITなどの米国の経済学の博士課程で教育を受けていることが分かる…。
こうした現象は世界的に見られるのではないかと思う。僕が履修した大学院の経済学の各課程でも、貧しい発展途上国からの学生が多くいた。彼らの米国の経済学大学院への留学費用は政府が負担しており、帰国すれば母国の財務省運輸省で働くことになっていた…。つまり、彼らは米国にやって来て、2年間数学を演習し、有益なことを何ら学ぶことなく帰国するわけだ。
大抵の経済学者は、まあ、政策に興味があるならば公共政策の課程を履修すべきだよ、と言ってこの問題について口を拭おうとする。問題なのは、経済学の外の世界では未だに、教育を受けた経済学者は経済政策の問題について考える訓練を受けている、という誤った印象を持っていることだ。その結果として、白川方明からベン・バーナンキ、ラリー・サマーズに至るまで、今の世界を代表する政策担当者を見てみると、数学を素早くできることを核とする教育を受けた人たちになっているわけだ。
僕に日銀総裁の座を3ヶ月与えてくれたなら、かの国の経済問題を直してあげられるのだが…。

*1:cf. 本石町日記さんの指摘

*2:原文ではboard governorと記述しているが、ここでは実際の肩書きに合わせた。

*3:山口廣秀氏のこと。