ロビン・フッドはいらない?

今日はWorthwhile Canadian Initiativeブログの記事の中でも、久々にStephen Gordonの書いたエントリを取り上げてみたい。

11/26エントリでGordonは、富裕層への課税を強化して貧困層の子供を助けよう、というエド・ブロードベント元新民主党党首の論説を取り上げ、貧困層への援助は良い考えだが、税制変更によってそれを達成しようとするのは間違っている、と指摘している。


というのは、確かにカナダでも上位1%への富の集中が進んでいるが、上位5%とか10%になると話が違ってくるからである。上位1%への課税を強化した場合、確かに不平等の進展を遅らせる効果はあるかもしれないが、それほど多額の税収をもたらすわけではない。一方、ブロードベントが提案するように、課税強化の範囲を上位5%ないし10%にまで広げてしまうと、中位層と同様に所得が近年あまり増加していない人まで含まれることになってしまう。そうした人たちの多くは生産性の高い労働者であり、増税による逆インセンティブ効果が懸念される。


また、レイン・ケンウォーシーの最近の研究から以下の図を引用し、国際的にみても、税制による不平等の是正効果は限られている、ということを示している。この図を見て分かるように、北欧などの高福祉国で可処分所得当初所得に比べたジニ係数の低下をもたらしているのは、税金よりもむしろ所得移転なのである。


従って、税金を増やすならば税体系に歪みをもたらさない間接税の税率引き上げに頼るべきであり、企業の国際競争力を考えると法人税も減らすべきである、とGordonは過去の自エントリを引用して訴えている。その上で、格差是正には所得移転を活用すべし、とのことである。


彼はエントリの最後をこう結んでいる。

It's true that these tax instruments probably won't do much in the way of redistributing income, but as we've seen, that's not the point. They are an efficient way of generating tax revenues that can be in turn redistributed in the form of transfers.


Successful social democracies have learned to worry less about taking from rich and to focus on giving to the poor. It's a lesson the conventional Canadian Left has yet to absorb. And until it does, we're not likely to make much progress in solving problems such as child poverty.
(拙訳)
こうした税制度が所得再分配にはあまり実効が無いであろうというのは確かだが、これまで述べたように、それが目的ではない。それらは税収をもたらすための効率的手段であり、そうして集められた税収は、所得移転の形で再分配することができる。


成功した社会民主主義は富裕層から取ることにあまり力を入れず、貧困層に与えることに焦点を当てることを学んだ。それは伝統的なカナダの左翼がこれから吸収すべき教訓である。そうしない限り、子供の貧困のような問題にはあまり進展が見られないだろう。


翻って我が国の民主党を見ると、その辺りは理解しているようにも見える。政権を手に入れた今、問題はその実行であるが、果たしてこれからどうなることか…。