十六の夏

正確には十七の夏ですな。


クルーグマンが「Sour sixteen」というタイトルのブログエントリで取り上げたが、リチャード・ポズナーがクリスティーナ・ローマー批判の際に犯した凡ミスがちょっとした祭りになったらしい*1


ポズナーの記事の問題の箇所は以下の通り。

Romer argues in her talk that by the end of the second quarter of this year, $100 billion of stimulus money had been spent. That is a suspiciously round number, and it is unclear how it was arrived at; but let us assume it is accurate. She then argues that this small expenditure--about two-thirds of one percent of the Gross Domestic Product--is responsible for the fact that the decline in GDP fell (on an annualized basis) from 6.2 percent in the first quarter of the year to 1 percent in the second quarter (though the latter figure is likely to be readjusted upwards).

Honesty about the Stimulus - The Atlantic

(拙訳)ローマーは、今年の第2四半期の終わりまでに1000億ドルの景気刺激の支出が行なわれた、と述べた。これは疑わしく丸められた数字で、どのように導き出されたか不明確だ。だが、取りあえず正しい数字だとしよう。彼女は、この小さな支出――GDPの1%の2/3――が、第1四半期の年率6.2%のGDP下落から、第2四半期の1%の下落(後者は後で上方修正されそうだ)になったことに与っているという。


デロングは簡潔にこの誤りを指摘する

  • ポスナーは5(≒6.2-1)という数字を2/3という数字に対比させて、ローマーの主張を批判したいらしい。1ドルでは7.5ドルの効果は生めない、と。
  • しかし四半期ベースで考えると、支出はGDPの2/3%ではなく2.6%(≒2/3÷1/4)。
  • また、年率成長率を四半期ベースに換算すると、6%ではなく1.5%。
  • 従って正しい比較は1.5%と2.6%。つまりポズナーは数字を16倍も外した。


ポズナーへの批判には、デロングのほかMark Thoma(ここここ)、メンジー・チン(ここここここここ)も参加しており、批判内容も上記の点以外に多岐に亘っている。ポズナーも黙ってはおらず、ここここで反論を試みているが、如何せん上記のミスが大きすぎたのと、専門外の分野での専門家相手の他流試合ということでやや分が悪いようだ。財政刺激策に関するリベラル派VSシカゴ学派の論争を一人で背負い込んだ形で、少し気の毒な気もするが…。

*1:ちなみにsour sixteenとはこういう意味との由。その点ではこちらの曲の方が意味的に合っているかも。