昨日紹介したモハメド・エラリアンの論説では、FRBの出口戦略の難しさを表現するに当たってルービニ記事にリンクしていた。今日はそのルービニのFT記事の内容を簡単に紹介する。
- 2008年第4四半期〜2009年第1四半期の先進各国の経済の落ち込みは、大恐慌の初期に似ていた。だが、その後の政策当局の努力の甲斐あって、落ち込みの速度は弱められた。
- ここで、以下の3つの疑問が湧く。
- いつ世界不況は終わるのか?
- それはどのように終わるのか?
- 景気の再後退の恐れはないのか?
- 第一の疑問については、世界経済全体は今年下半期には底をつけると見ている。
- 第二の疑問については、以下の理由により、V字型ではなくU字型の回復になろう(ただし、回復の初期の何四半期かは大恐慌レベルの落ち込みからの急速な成長があるだろう)。
- 雇用の弱さ。これは労働者のスキル、ひいては労働生産性の成長にも悪影響を与える。
- 本当のデレバレッジはまだ始まっていない。今回の危機は、流動性だけではなく支払い能力の危機であったが、金融機関の損失はまだ公的部門に転嫁されていない。このことは、銀行の貸出能力、家計の支出能力、企業の投資を制約する。
- 経常赤字国では、消費者が貯蓄しなければならないが*1、その消費者は負債と逆資産効果に喘いでいる。
- 公的支援にも関わらず、金融システムは依然として大きく傷ついている。影の銀行システムはほぼ消滅し、商業銀行も不良債権と資本不足に相変わらず苦しんでいる。
- 収益性もまだ弱い。高水準の負債、デフォルト・リスク、低成長、継続的なデフレ圧力による利益への下押し圧力は、企業の生産、雇用、投資の意欲の足枷となる。
- 巨額の財政赤字が積み上がった公的債務による民間支出のクラウディング・アウトの危険性。しかも、財政刺激の効果も来年早々には消えてしまうので、成長維持のためには民間の需要がますます必要となる。
- グローバル不均衡の是正により、貯蓄超過国は経常黒字の縮小を迫られ、それは世界景気の回復を弱める。