少し前に、TIMEが金融危機の戦犯25人をリストアップしていた。The Big Pictureの2/13エントリで、バリー・リソルツ(Barry Ritholtz)が、このリストには欠陥があると批判しつつ紹介している。
以下がその25人のリスト。
- アンジェロ・モジロ(カントリーワイド共同創立者、元CEO)
- フィル・グラム(上院銀行委員会委員長(1995-2000))
- アラン・グリーンスパン(前FRB議長)
- クリス・コックス(前SEC委員長)
- 米国の消費者
- ハンク・ポールソン(前財務長官)
- ジョー・カッサーノ(AIG金融商品部門設立メンバー)
- イアン・マッカーシー(ビーザー・ホームズCEO)
- フランク・レインズ(元ファニーメイ会長兼CEO)
- キャスリーン・コーベット(元S&P CEO)
- ディック・ファルド(元リーマンCEO)
- マリオン&ハーブのサンドラー夫妻(元ワールド・セイビングズ・バンク共同CEO)
- ビル・クリントン(元米大統領)
- ジョージ・W・ブッシュ(前米大統領)
- スタン・オニール(元メリル・リンチCEO)
- 温家宝(中国首相)
- デビッド・レレア(元全米不動産業協会のチーフエコノミスト)
- ジョン・デバニー(ヘッジファンド経営者)
- バーニー・マドフ(ポンツィ・スキーム組成者)
- ルー・ラニエリ(MBSの生みの親)
- バートン・ジャブリン(HGTVの親会社スクリプスネットワークの番組編成者)
- フレッド・グッドウィン(元ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド会長兼CEO)
- サンディ・ワイル(元シティグループ会長兼CEO)
- デビッド・オドソン(元アイスランド首相)
- ジミー・ケイン(元ベア・スターンズ会長兼CEO)
この順番はタイムのランク付けだが、投票によって変動する順位も併せて公開している(上記TIMEリンク先参照)。そちらでクリントン、ブッシュ、グリーンスパンの順位が下がっていることにリソルツは驚いている。
リソルツがこのリストについて批判している点は以下の通り。
- バーニー・マドフは盗人かもしれないが、金融危機のグローバル経済への影響には何の責任もない。
- 米国の消費者というのは広義すぎる。無責任な住宅購入者とすべきだろう。
- なぜ温家宝が入っている? 我々の負債を購入するとはどういうことだ、皆あんたの責任だ、ということ?
- ロバート・ルービンとラリー・サマーズが見当たらない。「救済国家」に書いたように、グラス・スティーガル法廃止と商品先物近代化法にクリントンが署名したのは彼らの助言によるものなのだ。
- クリントンも悪いがブッシュはもっと悪い。船が氷山に衝突した時の船長は彼なのだから。彼の就任時にリスクの種は既に撒かれていたが、彼とその部下の無能なSEC委員長や規制緩和論者は事態をもっともっと悪化させた。
- レレアは単なる嘘つきのチアリーダーに過ぎない*1。起こったことに責任があるわけではない。
- HGTVも同様。また、もしHGTVを指弾するならば、CNBCも同罪ではないか。
- リストのトップにモジロを持ってきたのはおかしい。彼はせいぜい破綻した300強のモーゲージ証券組成者の代表に過ぎず、業界全体の代表とまでは言えない。
- ジミー・ケインを最後に持ってきたのもおかしい。ベア・スターンズこそMBS業界の最大のプレイヤーであり、破綻した最初の投資銀行だった。少なくともトップ10に入っているべきで、哀れなスタン・オニールやディック・ファルドよりは非難に値する。そしてそれを言うなら、なぜモルガン・スタンレーのCEOが入っていない?
- 格付け会社としてS&Pの元CEOが入っているなら、それより大きなムーディやフィッチが入っていないのはなぜ?*2
- MBIA、アムバック、FGICといったモノラインが入っていないのもおかしい。彼らの破綻は地方政府の財政に甚大な被害を及ぼした。
- ルー・ラニエリを今回の件で指弾するのは、オリバー・ウィンチェスターに第一次世界大戦の責任を問う、もしくはとうもろこしを栽培する農民に肥満の責任を問うようなもの。
なお、元のサイトのリストの各人のページには、容疑者撮影風の合成写真が添えられている。米国の良心とも言われるTIME誌にしてはイエロージャーナリズム風の随分安っぽいやり方だな、と個人的にはそこが一番気になった。