エリザベス・ウォーレンとランド・ポールが手を繋ぐ時?

少し前のブログエントリでロバート・ライシュが、左右のポピュリズムが連携する可能性を示唆している(H/T Economist's View)。
エントリの冒頭でライシュはウォーレンの言葉を紹介している。

More Americans than ever believe the economy is rigged in favor of Wall Street and big business and their enablers in Washington. We’re five years into a so-called recovery that’s been a bonanza for the rich but a bust for the middle class. “The game is rigged and the American people know that. They get it right down to their toes,” says Senator Elizabeth Warren.

Which is fueling a new populism on both the left and the right. While still far apart, neo-populists on both sides are bending toward one another and against the establishment.
(拙訳)
経済はウォール街と大企業とそのワシントンの支持者に有利なように操作されている、とかつてないほど多くの米国人が信じている。いわゆる景気回復局面に入ってから5年が過ぎたが、その回復は富裕層にとって大儲けの機会だったものの、中間層にとっては破滅の危機だった。「ゲームは操作されており、米国の人々はそのことを知っている。彼らはそのことを肌身に沁みて感じている」とエリザベス・ウォーレン上院議員述べた
このことは左右両派の新たなポピュリズムに油を注いでいる。両派の新ポピュリストは、依然として隔たりは大きいものの、お互いに歩み寄っているとともに、エスタブリッシュメントへの反抗を強めている。

その上でライシュは、ロン・ポールの息子であるランド・ポール上院議員*1や、テッド・クルーズ上院議員*2、ジェブ・ヘンサーリング下院議員、およびジャスティン・アマッシュ下院議員といった共和党の面々が、ウォーレンやバーニー・サンダース*3と見紛うようなエスタブリッシュメントへの反感を表明していることを紹介している。


そして、

And it’s not only the rhetoric that’s converging. Populists on the right and left are also coming together around six principles:
(拙訳)
言葉遣いだけが収斂しているわけではない。左右両派のポピュリストは以下の6つの原則についても一致しつつある。

と書いて、次の6原則を挙げている。

  1. ウォール街の大銀行を、潰すには大き過ぎないところまでダウンサイズする
  2. グラス=スティーガル法を復活させて投資銀行と商業銀行を分離し、銀行が預金者のお金でギャンブルするのを防ぐ
  3. 補助金などの大企業への福祉の撤廃
  4. 国家安全保障局が米国人をスパイするのを止めさせる
  5. 海外への米国の介入を減らす
  6. 大企業主導で作られた貿易協定に反対する


これは米国政治の地殻変動を物語っている、とライシュは言う。

Left and right-wing populists remain deeply divided over the role of government. Even so, the major fault line in American politics seems to be shifting, from Democrat versus Republican, to populist versus establishment — those who think the game is rigged versus those who do the rigging.
(拙訳)
左右のポピュリストは、政府の役割を巡っては大きな意見の分断がある。とは言え、米国政治の主要な断層線はシフトしつつあるように思われる。民主党共和党から、ポピュリスト対エスタブリッシュメント――ゲームが操作されていると考える者対ゲームを操作している者――へのシフトだ。


一方のエスタブリッシュメント側もこれに対応した動きを示している。ライシュが引くポリティコ記事によると、共和党の大口寄付者やウォール街共和党支持者らは、もしジェブ・ブッシュが立候補せず、クリス・クリスティーも失地回復できなければ、ヒラリー・クリントンを支持する、と述べているという。ある共和党寄りのウォール街弁護士は「ランド・ポールないしテッド・クルーズエリザベス・ウォーレンなどという構図は皆の悪夢だ」と語ったとの由。

これについてライシュは、その弁護士の言う“皆”というのはウォール街や大企業の皆であって、彼らの“悪夢”は2016年には実現しないかもしれないが、今の傾向が続くならば似たような“悪夢”が今後十年以内に実現するだろう、と警告している。もし米国のエスタブリッシュメントエスタブリッシュメントに留まりたければ、新ポピュリズムの台頭をもたらしている懸念に対応するべきで、それと戦おうとすべきではない、という一文でライシュはこのエントリを締め括っている。