昨日はサマーズの財政刺激策を取り上げたが、今日は、もう一人の大物経済学者、今年6月まで31年間NBER所長を務めていたフェルドスタインの財政刺激策を取り上げてみる(Economist's View、マンキューブログ経由)。
フェルドシュタインは、現在(今日まで?)、マケインの経済顧問を務めており、政治座標軸上は、オバマ政権の財務長官にも擬せられるサマーズと対極に位置する。が、二人はかつて師弟関係にあった(ここで取り上げた記事やここにあるように、フェルドシュタインがレーガン政権のCEA委員長だった時にサマーズはその下で働いていた)。今回、財政政策が必要、という点で、党派の違いを超えて師弟が一致したわけだ(ついでに言うならば、同じくレーガン政権のCEAで働いたクルーグマンも財政政策の必要性を訴えている)。
フェルドシュタインによると、住宅価格の下落で3兆ドル、株価下落で8兆ドルもの資産が家計から失われた。そのため、財政刺激策も1000億ドルでは不十分で、年3000億ドル規模が必要になる、と彼は分析している*1。
通常の景気後退は12ヶ月程度なので、財政政策はラグを考えると間に合わないことが多いが、今回の景気後退はより長引きそうなので、財政刺激が有効だ、というのが彼の見立てである(この点はクルーグマンも同様の見解を述べている)。幸い両候補とも上院議員なのだから、大統領就任を待たずに、11月4日を過ぎたら勝者がすぐに法案を提出すべき、と彼は主張する。また、オバマ陣営に対しては、増税を財源にするという案は引っ込めるべき、と釘をさすことも忘れない。
刺激策の内容としては、(サマーズの言うような)長期的に生産性を上げる効果も大事だが、まずは、短期的な需要喚起につながることを重視すべき、と彼は言う。そして、右派らしく、これを機に、橋や道路だけでなく、アフガンやイラクで消耗した軍隊の再建にも金を回すべき、とも述べている。
これを紹介したEconomist's ViewのMark Thomaは、最後の軍への投資という点を除けば、概ねフェルドシュタインに同意している。
一方、サマーズ、クルーグマンと同じくレーガン政権のCEAで働いたマンキューは、フェルドスタイン案にやや距離を置いた紹介の仕方をしている。そのブログエントリの冒頭では、かつて"The Retreat from Keynesian Economics"というエッセイを書いたフェルドシュタインが、完全にケインジアンな案を出した、と皮肉交じりに書いている。また、今春の税還付の効果が無かった、というフェルドシュタインの分析を早計と批判しているほか、財政政策をどうしても実行するのであれば、その使い道(個人に還付orインフラ整備)は、連邦政府が決めるのではなく、各州に任せるべき、とも書いている。