一昨日のエントリで、今回の金融危機に関するダイアモンドとカシャップの解説を取り上げたが、その紹介で彼らが強調した大事な点を書き落としたので、追記しておく。
それは、資本注入を受ける銀行が配当を支払い続けるべきではない、という点である。
マンキューブログで紹介されていた別の経済学者によるこの記事でも、その点は強く主張されている。要は、投入した税金で株主(当の銀行経営者を含む)を引き続き太らせるとは何事か、というわけだ。株価維持のために配当が必要という意見については、モジリアニ・ミラーの定理を用いて(ただしモジリアニ・ミラーの名前自体は出さずに)反論している。そして、ゴッドファーザーよろしく銀行のCEOを集めて資本注入を言い渡したポールソンを、実はコルレオーネではなくサンタクロースだった、と揶揄している。
とはいうものの、実際に救済銀行の配当を禁止した英国では動揺の声も見られるようだ。
When news of this hit trading screens, some investors took fright. In recent years banks have accounted for about 25% of all the dividend income produced by the FTSE 100. A number of pension schemes, investment trusts and insurance companies had been holding on to bank shares for one reason only - dividends.
The Times & The Sunday Times
...
Treasury officials insist that the only condition it put on the banks was to stop them paying dividends for a year, not five years, and that markets had got hold of the wrong end of the stick. But this apparent clarification failed to lift uncertainty.
(余談:↑この記事のタイトルはこれに掛けているのか?)
Oct. 15 (Bloomberg) -- Prime Minister Gordon Brown said the U.K. government is talking to banks about the ban on paying dividends imposed on those institutions taking taxpayer money, signaling ministers may soften the rules.
Bloomberg - Are you a robot?
ちなみにヨーダはかつてこのように述べている。
○上田(清)委員 こういう議論もございます。過少資本で資本注入をする銀行が配当するのは何事だ、本来おかしいのではないか、こういう議論もありますが、大蔵大臣は、これは多分三月三日の記者会見で、配当は株主への務め、こういう企業論理の側に立ってお話しされた。これは記者会見ですので、議事録を私は見ておりませんので、新聞だけのものでございますので、はっきりしておりませんが、大蔵大臣はどうお考えなんでしょうか。私は、今国務大臣が言われましたように、減配する、この考え方に立つべきだし、むしろ配当なんかできない、このぐらいの考え方に立つべきだというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/145/0006/14503090006008c.html
○宮澤国務大臣 これは結果として私の申しようが悪かったと実は思っておるのですが、事の次第は、参議院の予算委員会であったと思います、御質問がありまして、公的資金の注入を受ける銀行が配当をするのはけしからぬではないか、簡単に言いますとそういうお尋ねでありました。
それで、私は、今柳沢大臣が言われましたように、ここは健全行と健全でない銀行とを法律がちゃんと書き分けてありまして、健全行については利益流出云々ということだけ言ってあって、健全度が悪くなるに従って配当に触れている、そういう法律の書き方でございますから、それを一概に配当をするのはけしからぬというお説には私はすぐには賛成できないということをお答えをいたしました。
ところが、その点について記者会見で質問がありまして、本当にそう思うのかと言いますから、私は、それはやはり配当というのは基本的には経営者の株主に対する義務ですから、特に落ち度がないのに配当をやめてしまうというのはそれでいいんだと言うわけにはまいらないということを申しました。
そのときには法律がそういうふうに書いてあることを頭に置いて言ったわけでございますけれども、悪い癖でちょっとまた理屈を言い過ぎたと思うんです。再生委員会が苦労していらっしゃるときに何もそんなことは言わなくてもよかったなと思いまして、柳沢大臣には、大変失礼したというおわびをしたところであります。それが真意でございます。