ここからはナッシュの論文2本のレジュメ。最初は協力2人ゲームを扱った表題の論文。
論文はJSTORで購入するか、以下の本に所収されているものを参照されたし。
- 作者: H.W.クーン,S.ナサー,落合卓四郎,松島斉
- 出版社/メーカー: シュプリンガー・フェアラーク東京
- 発売日: 2005/10/22
- メディア: 単行本
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The Bargaining Problem(1950)
INTRODUCTION
- 協力2人ゲーム
- 2人とも
- 極めて合理的
- 自分が何が欲しいかの順序付けができる
- 交渉能力が同じ
- 相手の好みについて完全に熟知している
UTILITY THEORY OF THE INDIVIDUAL
●[前提]
1)期待(anticipation)に関しどちらを選好するか順序付けができる
期待の例: 明日Buickが手に入る
明日Cadillacが手に入る
明日1/2の確率でBuickが、1/2の確率でCadillacが手に入る
pの確率でAが、(1-p)の確率でBが生じる = pA+(1-p)B …これも期待
2)選好順序に関し推移性の法則が成立する
=AがBより選好され、BがCより選好されれば、AはCより選好される
3)選好順序が同じ状態をいかなる確率で加重平均してもやはり同じ選好順序になる
4)AがBより選好され、BがCより選好されれば、AとCの加重平均がBと同じ選好順序になる
確率の組み合わせが存在する = 連続性の前提
5)AとBの選考順序が同じならば、pA+(1-p)CとpB+(1-p)Cの選考順序も同じ。
= AとBは代替可能
ここから、選好を数量的に表現した効用関数(utility function)の存在が示せる。
効用関数はuniqueではない = uが効用関数ならau+b (a>0)も効用関数
(a) u(A) > u(B) = AはBより選好される
(b) u[pA+(1-p)B] = pu(A)+(1-p)u(B)
TWO PERSON THEORY
2人の効用関数も1人の効用関数の組み合わせとして定義できる。
[A,B]が2人の期待を表すとすると p[A,B]+(1-p) [C,D] = [pA+(1-p)C, pB+(1-p)D]
効用関数の原点を交渉が存在しない状態に置き、グラフを描く。
効用関数の集合に関する仮定:
- 凸集合
∵ 効用関数の確率による加重平均も集合に含まれる
- コンパクト
集合は有界で最大値を持つ
集合をS 、2人の効用関数をu1とu2、交渉の最適解をc(S)と置く。
●[前提(続き)]
6)α,β∈S、u1(β)>u1(α) 、u2(β)>u2(α) ならば α≠c(S)
7)T⊃S、c(T)∈S ならば c(T)=c(S)
… IIA(Independence of Irrelevant Alternatives)
8)Sが対称ならば、c(S)は直線u1=u2上にある (交渉能力の同等性)
Sが対称 … (a,b)∈S ならば (b,a)∈S Sのグラフが直線u1=u2について対称
→ 最適解は、第一象限においてu1u2を最大化する点
集合がコンパクト …解が存在
集合が凸 …解はユニーク
∵)u1u2を最大化する点を(1,1)と置く
⇒ u1+u2>2となる点は集合内に存在しない(図1)