昨日エントリまででは歴史的な流れを追ったが、ここからは各論。
<経常収支を巡る論争>
●小宮隆太郎vsリチャード・クー他 経常黒字論争(1990s)
Y=C+S (収入=消費+貯蓄)
Y=C+I+X-M (支出=消費+投資+輸出−輸入)
→ X-M = S-I
左辺=経常収支、右辺=貯蓄超過
- 小宮
- 日本の経常黒字は、国内で貯蓄が投資を上回っているために生じたもので、貿易慣例の閉鎖性とは関係ない。
- クー
- 日本の経常黒字は、日本の特殊性から生じたものだ。
●ポール・クルーグマンvsレスター・サロー他 競争力論争(1990s)
●ポール・クルーグマンvsロバート・カトナー他 産業政策論争(1990s)
- カトナー
- クルーグマンらが発展させた新貿易理論によれば、比較優位は産業政策によって培われることができる。日本がその代表例。
- クルーグマン
- 比較優位が天然資源、地理的条件以外に歴史的経緯により生じるのは事実だが、産業政策が有効だと言う話は別問題。
- Paul Krugman[1995] “Peddling Prosprty:Economic Sense and Nonsense in the Age of Diminished Expectations” New York: W.W. Norton & Company
- Robert Kuttner[1991] “The End of Laissez-Faire”
●ポール・クルーグマンvsロナルド・マッキノン他 為替レート論争(1990s)
- マサチュ−セッツ・アベニュー・モデル(クルーグマン)
- 通貨政策で経常黒字や経常赤字を減らすことは出来る。巨額の経常黒字[赤字]をいつまでも続けることは出来ないので、均衡[ゼロ]に向けた調整を為替レートで行なうことができる。
ただ、支払履行能力が問題にならない限り、経常黒字[赤字]を減らすというのは、経済的問題というよりすぐれて政治的問題。 - マッキノン、小宮
- 経常黒字[赤字]には構造的黒字[赤字]と循環的黒字[赤字]がある。
循環的黒字[赤字]は時々の経済状況によって増減するが、構造的黒字は各国の貯蓄・投資性向により決まるので、為替レートでの調節は不可能。
*1:文献として本文中に記述したのは実際に参照した版だが、リンク先はなるべく新しい版にリンクした。以下同様。
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