職場としての教室:如何に生徒の構成が教師の健康に影響するか

というNBER論文が上がっているungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「Classrooms as Workplaces: How Student Composition Affects Teacher Health」で、著者はKrzysztof Karbownik(エモリー大)、Helena Svaleryd(ウプサラ大)、Jonas Vlachos(ストックホルム大)、Xuemeng Wang(ウプサラ大)。
以下はその要旨。

Work-related burnout and stress-related sickness absence have become increasingly prevalent, but evidence on which workplace features shape workers’ mental health remains limited. Using population-level Swedish register data covering all lower- and upper-secondary teachers from 2006–2024, we show that schools serving more disadvantaged students exhibit substantially higher rates of sickness absence, particularly for stress-related diagnoses. Exploiting within-teacher variation across student cohorts, we separate sorting from exposure and find that a one standard deviation increase in student disadvantage raises overall and stress-related sick leave by 3.6% and 8.7%, respectively. Survey evidence indicates that these effects operate through classroom conditions rather than workload or organizational differences. The findings establish client composition as a distinct and policy-relevant determinant of worker health in contact-intensive occupations.
(拙訳)
仕事関係の燃え尽き症候群とストレス関係の病欠はますます一般的になっているが、どの職場の特性が労働者のメンタルヘルスを形成するかについての実証結果はまだ限られている。2006-2024年のすべての中学と高校の教師をカバーしたスウェーデンの全国レベルの登録データを用いて我々は、より不利な環境の学生*1が在籍している学校で顕著に病欠の割合が多く、特にストレス関係の診断によるものについて多いことを示す。学生のコホートに跨る教師同士のばらつきを利用して我々は、教師の選択と職場からの影響を分離し*2、学生の不利な環境の度合いが1標準偏差高くなると、全体ならびにストレス関連の病気休暇がそれぞれ3.6%と8.7%増えることを見い出した。サーベイ調査による実証結果が示すところによれば、こうした効果は、仕事の負荷や組織の違いによってではなく、教室の状況を通じて作用している。この発見は、顧客の構成が、対面が多い職業における労働者の健康についての明確かつ政策に関連する決定要因であることを明らかにしている。

論文によると、スウェーデンでの教育は無料で授業料は禁じられているが、それでも最近は学校の選別が進んでいるという。その主な経路は2つで、2000年代半ば以降の大量の難民の流入による近隣の人口構成の変化と、学校選択制度、および資金は公的だが運営は民間という学校の拡大によって、地元の学校からのオプトアウトができること、である。最近では、高校は居住地よりも中学のGPAを重視して選抜するようになり、ますます上位校と下位校の差が開いているという。その点も合わせて、身も蓋もない結果、という感じである。

*1:本文によると、その計測のために、生徒の社会経済的な背景に基づく指標である学生指数(Student Index)を作成したとの由。同指数は、6年生時点の成績(GPA)を、本人や親の特性(海外出身かどうかの指標と絡めた親の教育、収入、雇用状況、福祉給付金の受給状況。そのほか、生物学的な両親と一緒に住んでいるか、移民については親と本人の出身国/出身地域、本人が6歳もしくは11歳になる以前に移住したかの指標)に回帰して構築したとのことである。回帰の調整済み決定係数は、中学は0.27、高校は0.30との由。

*2:本文では教師の固定効果を使って、より健康な教師がより良い学校に行くという選択効果を除外していると説明している。