というNBER論文が上がっている(ungated(SocArXiv)版)。原題は「American Investment in Chinese Renminbi」で、著者はBruno Cavani(コロンビア大)、Christopher Clayton(イェール大)、Amanda Dos Santos(NYU)、Matteo Maggiori(スタンフォード大)、Jesse Schreger(コロンビア大)。
以下はその要旨。
This paper uses microdata on U.S. mutual fund and ETF portfolios from SEC Form NPORT to study American investment in Chinese Renminbi (RMB)–denominated bonds. We show that, even as total foreign holdings of Chinese bonds rebounded in 2024, U.S. holdings of RMB bonds fell sharply and that most of this decline reflects funds exiting RMB positions entirely. These patterns point to a shift in the composition of China’s foreign investor base away from U.S. institutional investors and illustrate how publicly available microdata can inform work on international currency use.
(拙訳)
本稿は、SECフォームNPORT*1の米国のミューチュアルファンドとETFのポートフォリオのミクロデータを用いて、米国の中国人民元建て債券への投資を調べた。2024年に海外全体の中国債券保有が反発したにもかかわらず、米国が保有する人民元債は急速に減少し、その減少の大半はファンドの人民元からの完全な撤退を反映していることを我々は示す。このパターンは、中国への主な海外投資家の内訳において米国の機関投資家が減りつつあるという変化を示しており、公的に利用可能なミクロデータが国際的な通貨の利用についての研究に情報をどれだけもたらすかの例になっている。
以下はTIC(Annual Treasury International Capital)データ*2とNPORTデータの各通貨の構成比を示した図。TICは米国全体のポジションなので、(無視できないバラツキがあるとはいえ)両者が概ね整合していることは、ファンドの保有状況が米国の他のセクターの保有状況も概ね表していることを示している、との由。図は2022年末時点だが、2024年末時点では人民元は米国の海外債ポートフォリオの0.4%(TIC)ないし0.7%(NPORT)を占めているという。

以下は中国債の保有状況を示した図。海外全体では、ゼロコロナ政策で落ち込んだ4370億ドルの底から2024年に6250億ドルのピークを付けるまで反発したが、米国が占める比率は2020年の6.1%がピークで、2024年には2.6%まで低下したとの由。

図bではポートフォリオに占める中国債の割合が各閾値を超えているファンドの割合を示しているが、少しでも保有しているファンドの割合は2021Q3の5.3%から2024Q4の2.1%と半分以下になっている。著者たちの計算によれば、図aで示されているおよそ100億ドルの減少のうち、65億ドルが2021Q3と2024Q4の間に完全に手仕舞いしたファンドによるものだという。これは、同期間の地政学的緊張の高まりによる中国へのエクスポージャーのリスク評価の変化ないし規制面の懸念を反映したものではないか、と著者たちは推測している。