というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンクがある著者の一人のページ)。原題は「The Optimal Monetary Policy Response to Tariffs」で、著者はJavier Bianchi(ミネアポリス連銀)、Louphou Coulibaly(ウィスコンシン大学マディソン校)。
以下はその要旨。
What is the optimal monetary policy response to tariffs? This paper explores this question within an open-economy New Keynesian model and shows that the optimal monetary policy response is expansionary, with inflation rising above and beyond the direct effects of tariffs. This result holds regardless of whether tariffs apply to consumption goods or intermediate inputs, whether the shock is temporary or permanent, and whether tariffs address other distortions.
(拙訳)
関税への最適な金融政策の反応は何か? 本稿は開放経済ニューケインジアンモデルでこの問いを追究し、最適な金融政策の反応は拡張的なもので、インフレが関税の直接的な影響以上に上昇することであることを示す。この結果は、関税の対象が消費財でも中間投入財でも、ショックが一時的でも恒久的でも、関税が他の歪みに対処する場合でも成立する。
導入部によると、主流派の見解では、関税は価格水準の一度だけの変化をもたらすので、中銀はスタンスを変えるべきではない*1。一方、この研究では、次の論理によって拡張的な金融政策が最適な対応となる。
- 関税が課されると、家計と企業は輸入財の費用が社会費用より高くなったと認識する。
- この乖離が生じるのは、輸入の増加は追加的な関税収入をもたらし、それが均衡で家計所得を増やす、ということを個々の主体が内部化できないためである。
- その結果、輸入は社会的な最適水準以下に落ち込む。
- 関税の代替効果を打ち消し、輸入の減少を緩和するために、最適な金融政策は雇用と総所得を刺激するべきである。
また、マンデル=フレミングの枠組みに基づく主流派の見解では、関税は為替相場の増価につながり、関税が恒久的ならば貿易収支に影響しない。一方、この研究では、名目為替相場は関税が課された後に減価し、恒久的な関税でさえ貿易黒字を増やす。これは、拡張的な金融政策が為替相場を減価させ、短期的な雇用水準の上昇によって家計が海外資産を蓄積するためである。
多くの主流派経済学者に批判されているトランプ政権の関税政策とFRBへの金融緩和圧力を支持する結果のようにもみえるが、この結果を本当に実地に適用するならば、トランプ政権の関税政策の推進とともに米金利が下がり、日本からみると円高ドル安が進むことになる。
*1:例:Speech by Governor Waller on the economic outlook - Federal Reserve Board「If, as I expect, tariffs do not have a significant or persistent effect on inflation, they are unlikely to affect my view of appropriate monetary policy.」。