ルーカス後のマクロ経済学

という論文(原題は「Macroeconomics After Lucas」)をトーマス・サージェント上げている(H/T タイラー・コーエン)。
以下はその要旨。

This sequel to Lucas and Sargent (1978) tells how equilibrium Markov processes underlie macroeconomics and much of applied dynamic economics today. It recalls how Robert E. Lucas, Jr. saw Keynesian and rational expectations revolutions as interconnected transformations of economic and econometric theories and quantitative practices. It describes rules that Lucas used to guide and constrain his research. Lucas restricted himself to equilibrium Markov processes. He respected and conserved quantitative successes achieved by previous researchers, including those attained by quantitative Keynesian macroeconometric modelers.
(拙訳)
ルーカス=サージェント(1978)*1の続編である本稿では、如何に均衡マルコフ過程が今日のマクロ経済学と多くの応用動学経済学の根底にあるか、について述べる。本稿では、ロバート・E・ルーカス・ジュニアがどのように、ケインジアン革命と合理的期待革命を、経済学および計量経済学の理論と定量分析の相互に関連した転換として見ていたか、を再訪する。本稿では、ルーカスが自分の研究の指針とし、制約としていたルールを説明する。ルーカスは自分の研究を均衡マルコフ過程に限定していた。彼は、定量的なケインジアンのマクロ計量モデル構築者の業績も含めて、以前の研究者が達成した定量的な成功を尊重し、維持していた。

ルーカスは、ケインジアン革命と合理的期待革命について、手法の革命という点で共通していることを強調したとの由。即ち、共に、経済学を定量的で科学的なものとし、経済的行動を明示的に統計的に描写するようにした。そのためにいずれも、同時連立確率的差分方程式を用い、前例の無いあり得る政府の政策の集合に対して不変なパラメータを分離することを目指した。ただ、ケインジアンのマクロ計量モデルで政策措置に対し不変と仮定された動学的需給曲線のパラメータは、前例の無い政策によって変わるであろうパラメータの関数であることが均衡マルコフモデルで明らかになったとの由。