マクロ経済学への過少投資

ダニ・ロドリックが以下のようなツイートを行い、注目を集めた。

This is unfortunately quite true. From any rational, decision-theoretic standpoint, the Economics profession under-invests in imperfectly identified analyses of big/important/relevant questions relative to well-identified but comparatively uninteresting questions.
(拙訳)
これは残念ながら極めて真実である。如何なる合理的な意思決定理論の観点から言っても、経済学者は、きちんと解明されているが比較的面白くない問題に比べると、解明が不完全ながら大きな/重要な/足元に関係する問題に過少投資する。

これにブランシャールが以下のように応じている

I very much agree. Macro is often getting a bum rap, because it has to answer big, essential, general equilibrium questions, where the kind of identification one dreams of is rarely/never available. Absolutism, be it in identification or in micro foundations is bad.
(拙訳)
大いに同意。マクロ経済学は、人が望むような解明が滅多に/決して手に入らない、大きく本質的な一般均衡の問題に答えなくてはならないということで不当な非難を受けることが多い。解明においてであれミクロ的基礎付けにおいてであれ、絶対主義は宜しくない*1

この話は、ここで紹介したNick Roweの理論Xと理論Yの話を想起させる。ロドリックやブランシャールの言うようにマクロ経済学はまだまだ解明が不十分かもしれないとは言え、ほぼ一世紀に亘って様々なアイディアが出尽くしており、Roweの言う理論Xと同様、一般の経済学者が新たなアイディアで斬り込んで進歩をもたらせる可能性は少ない。そうなると、大多数の経済学者が自分の腕の振るう余地のある理論Y――それがRoweの言うように自身が実は信じておらず、ロドリックやブランシャールの言うように比較的面白くない話に関する理論であったとしても――に走るのは、ロドリックの言う合理的な意思決定理論の観点からすると実は理に適っているのかもしれない。


ちなみにロドリックのツイートはイェール大のBarbara Biasiのツイートに反応したものだったが、反響に恐れをなしたのかBiasiは今はアカウントに鍵を掛けてしまっている。