Francis Dieboldが表題のエントリ(原題は「Factor Model w Time-Varying Loadings」)で、スタンフォードのMarkus PelgerとRuoxuan Xiongの論文「State-Varying Factor Models of Large Dimensions」にリンクし、自分の以前の研究と関連付けている。
Dieboldによれば、Pelgerの論文は時変的なファクターローディングを持つ高次元のファクターモデルを、水準・傾き・曲率のイールドカーブモデル*1に適用しているが、もう一つ興味深い適用先がある、とのことである。それは、システミックリスクを追跡するためにDiebold=Yilmazが行ったような、金融市場における(銀行間の)結合度の測定である。Diebold=Yilmazは時変的な係数を持つ高次元VARでそれを行ったが、Pelgerのような時変的なファクターローディングによる因子構造分析がもう一つのやり方になる、とDieboldは言う。
ただしその場合、ファクターローディングの時間的変化だけでなく、ショックの異方的な変動性の時間的変化も織り込む必要がある、とDieboldは指摘している。というのは、結合度の因子構造分析では、ファクターローディングの大きさだけでなく、ファクターが説明するデータの変動の大きさも物を言うからである。もしファクターの動きがノイズに掻き消されてしまっていたら、ファクターローディングを時変的にしてもあまり意味は無い。
1ファクターの例で言うならば、
yt = λt ft + et
においてPelgerの手法はファクターローディングλtとファクターftの時系列を推計し、その推計は異方的なショックetの分散不均一性に対して頑健である。では、次のステップとして、etの時系列にボラティリティモデルを当てはめてはどうか、というのがDieboldの提案である。そうすれば、系全体を推計することができ、Diebold=Yilmazのような分散分解が可能になる、とのことである。