昨日紹介したスティーブ・キーンの33ヶ条の論題を巡る論争(支持側のガーディアン紙記事、およびそれに対する英経済学者の一団の反論)にダニ・ロドリックが反応し、経済学者向けと非経済学者向けそれぞれに彼自身の考えを表した十戒を書き下ろしている(H/T hicksianさんツイート)。
以下は経済学者向けの十戒の拙訳。
- 経済学はモデルの集合体である。その多様性を大切にすべし。
- モデルは一つのモデルであって唯一のモデルではない。
- 特定の要因とそれがどのように作用するかを取り出せるほどモデルを簡単化すべし。しかし、要因間の重要な相互作用を落としてしまうほど簡単化してはならない。
- 仮定が非現実的であることは問題ない。決定的に重要な仮定が非現実的であることは問題。
- 世界は(ほぼ)常に次善の状態である。
- モデルを現実世界に投影する際は明示的に実証的な検証をする必要があるが、そうした作業は科学というよりも技である。
- 経済学者間の意見の一致を、世の中の動きの確度と混同してはならない。
- 経済や政策について訊かれて「知らない」と言うことは問題ない。
- 効率性がすべてではない。
- 自分の価値観で一般の価値観を置き換えてしまうことは専門家の職権乱用である。
以下は非経済学者向けの十戒の拙訳。
- 経済学は、予め決まった結論の無いモデルの集合体である。そうでない議論は棄却すべし。
- 仮定がおかしいという理由で経済学者のモデルを批判してはならない。ある問題含みの仮定をより現実的なものにした場合に結果がどう変わるかを問うべし。
- 分析は簡明性を必要とする。複雑性の振りをした非一貫性に注意すべし。
- 数学に怯んではならない。経済学者が数学を使うのは彼らが賢いためではなく、十分に賢くないためである。
- 経済学者がある提案を行った時には、その提案の背後のモデルがなぜ現下の問題に適用できると確信したのかを問うべし。
- 経済学者が「経済的厚生」という言葉を使った場合は、それで何を意味しているかを問うべし。
- 経済学者が公けの場と教室で話が違うことがあるのに注意すべし。
- 経済学者は(皆)市場を崇めているわけではないが、市場の働きについてはあなたより良く知っている。
- 経済学者の考えは皆似たようなものだと思うなら、彼らのセミナーの一つに出席すべし。
- 経済学者は非経済学者に対して特に失礼だと思うなら、彼らのセミナーの一つに出席すべし。