金融政策で高インフレになるリスクは小さい

という主旨のEconomic LetterをSF連銀のVasco Cúrdiaが書いている
以下はその冒頭部からの引用。

This Economic Letter describes results from a model that explicitly accounts for the different dimensions of monetary policy to quantify the risks to the inflation forecast. This analysis suggests that inflation is expected to remain low through the end of 2016, and the uncertainty around the forecast is tilted to the downside, that is, the risk of lower inflation. In particular, the probability of low inflation by the end of 2016 is twice as high as the probability of high inflation—the opposite of historical projections. The analysis also suggests that the risk of high inflation collapsed in 2008 and has remained well below normal since. Importantly, according to the model, there is little evidence that monetary policy constitutes a major source of inflation risk.
(拙訳)
本エコノミックレターでは、インフレ予測におけるリスクを定量化するために金融政策の様々な側面を明示的に取り込んだモデルの結果を説明する。本分析では、インフレは2016末まで低く留まると予想されること、および、予測周辺の不確実性は下方向、即ち低インフレリスクの方向に傾斜していることが示される。具体的には、2016年末の低インフレのリスクは高インフレのリスクの倍となる。これは過去の結果に基づく見通しの逆である。分析ではまた、高インフレのリスクは2008年に急激に低下し、それ以降は通常のな水準を大きく下回ったままであることが示される。重要なことは、モデルによれば、金融政策がインフレリスクの重大な要因となるという証拠はあまり見られない、ということである。

モデルが取り込んだ金融政策の様々な側面としてCúrdiaは、金利のほかに、以前のモデルで取り込んだ資産購入、および今回の分析で取り込んだフォワドガイダンスを挙げている。


モデルの予測が下図に示されているが、これによると中位値予測がFOMC目標の2%に戻るのは2016年末になるという。2014年前半の上昇傾向によりインフレが目標への道を辿り始めたと皆が思ったが、そうした上昇傾向はこれまでも何回か見られ、いずれも長続きしなかった。モデルによると、低インフレが続く主な理由は金融危機の持続的な影響、即ち信用市場の崩壊によって生じた投資不足と経済資源が十分に活用されていないことによる、とのこと。
また、モデルが示すところでは、金融政策は0.8%ポイントインフレを押し上げたが、その効果は2016年末までにゼロに戻る。現状では、金融政策が過度なインフレを引き起こすところからは程遠い、とCúrdiaは言う。


また、1年後および2年後に低インフレもしくは高インフレとなる確率の時系列推移を示したのが次の2つの図である。

これを見ると、インフレが1-3%のレンジの外にはみ出す確率は過去3年間は比較的安定しており、特に2年後予想はそうである。
低インフレの確率は30%近辺で、これは長期確率の19%を大きく上回っている。
一方、高インフレの確率は、1年後予想は金融危機後に1%程度まで低下したままである。2年後予想は10-13%のレンジで推移しているが、これは過去の確率の31%を大きく下回っている。