ニューケインジアンのチョコレートの箱

引き続きコクランの新旧ケインジアンに関するエントリから、16日エントリの脚注で触れた末尾の段落を引用してみる。

You may disagree with all of this, but that reinforces another important lesson. In macroeconomics, the step of crafting a story from the equations, figuring out what our little quantitative parables mean for policy, and understanding and explaining the mechanisms, is really hard, even when the equations are very simple. And it's important. Nobody trusts black boxes. The Chicago-Minnesota equilibrium school never really got people to understand what was in the black box and trust the answers. The DSGE new Keynesian black box has some very unexpected stories in it, and is very very far from providing justification for old-Keynesian intuition.
(拙訳)
皆さんはここまで書いたことすべてに賛成しないかもしれないが、そのことはもう一つの重要な教訓の補強材料となる。マクロ経済学では、方程式から物語を紡ぎ出し、我らが小さな定量的寓話が政策にどのような意味を持つかを把握し、そのメカニズムを理解し説明する、というのは、方程式が非常に簡単な場合においても、本当に難しい。そしてそのことは重要である。誰もブラックボックスは信用しない。シカゴ=ミネソタの均衡学派は、人々にブラックボックスの中身を理解させその答えを信用させる、ということを実際にした試しが無い。ニューケインジアンのDSGEというブラックボックスは誰も予期しない物語を秘めており、オールドケインジアンの直観を正当化するということとは大きく懸け離れたところにいる。

Nick Roweはコクランのこの段落を引用し、新旧ケインジアンモデルにおける財政政策はコクランが思うよりずっと違っており、その理由を理解するのは難しい、とコメントしている。

Roweの解釈によれば、オールドケインジアンモデルでは財政支出の水準を増やすことが消費の拡大につながるが、ニューケインジアンでは財政支出の伸び率を減らすことが自然利子率の上昇を通じて消費の拡大につながるという。というのは、ニューケインジアンでは需給が常に均衡していることを前提にしているため、将来の財政支出が減少することはその分だけ消費が拡大することにつながり、それと整合的な自然利子率は上昇することになる、との由。