円の3割の減価に必要な日銀のバランスシート増加額は…

FT Alphavilleが、円の減価のためにどれだけ日銀がバランスシートを膨らませる必要があるかをざっと見積もったシティのNathan SheetsとRobert Sockinの報告を引用している:

Extrapolating these results to Japan, which admittedly may or may not be appropriate, suggests that weakening the currency by 25 to 30 percent might ultimately require an expansion of the BoJ’s balance sheet by roughly five times more than was the case with QE1—or by over 50 percent of GDP. With the BoJ’s balance sheet currently running at 35 percent of GDP, this would be a staggeringly large increase. While the amount of stimulus necessary to durably depreciate the yen and defeat deflation may ultimately prove far smaller than this extrapolated estimate, there is a good possibility that balance sheet policies will need to be pursued in enormous size if they are to have the desired effects on the Japanese economy.
(拙訳)
適切かどうか分からないのは承知の上で、この論文の結果を日本に当てはめると、為替を25ないし30パーセント減価させるには、大雑把に言って日銀のバランスシートをQE1の場合の5倍、即ちGDPの50%だけ最終的に膨らませる必要があることになる*1。現在の日銀のバランスシートがGDPの35%に達していることを考えると、それは信じ難いほどの大きな増加である。円を継続的に減価させデフレを克服するための刺激策に必要な額は、最終的にはこの推計よりもかなり小さくて済むかもしれないが、日本経済について所期の効果を得るために、巨額のバランスシート政策を追求する必要に迫られる可能性は十分にある。

しかし、30%の減価を達成しても、翌年の総合インフレ率は1.25%、コアCPIは0.3%高まるに過ぎない、とのことである。また、経済成長へのプラス効果も年率にして1/3%ポイントに過ぎない、と言う。従ってアベノミクスの他の矢は明らかに必要、とFT Alphavilleは述べている。

*1:参照先の論文の結論部ではQE1のアナウンスが3.5〜8%の減価をもたらしたと記述されているので、5倍という数字は、その平均値の5.75%と30%の比から求めたものと思われる。また、GDP比については、QE1は1.725兆ドル、米国のGDPは約15兆ドルなので、GDPの1割強、という計算に基づいているものと思われる。