ロムニー陣営の経済顧問を務めるフェルドシュタインが、ロムニーの掲げる税政策を擁護する論陣をWSJで張った*1ところ、デロングがそのフェルドシュタイン論説の基本的な数学の間違いを指弾するエントリを上げた(Economist's View経由)。
デロングは返す刀でフェルドシュタイン論説にリンクしたマンキューを血祭りに上げるとともに、フェルドシュタインが主な標的としたTax Policy Center(TPC)の反論を援用している。外野では、Econlogのデビッド・ヘンダーソンが、政治的立場としてはデロングよりフェルドシュタインに近いにも関わらず、デロングに軍配を上げている。
しかし、TPCエントリのコメント欄でVivian Darkbloomなるコメンター*2が指摘するように、フェルドシュタインの数学は特に間違っておらず、この件はデロングの勇み足であるように思われる。
デロングが明らかな数学的間違いと断じたフェルドシュタインの主張を式で簡単に表わすと、次のようになる。
(Y-d)r < Yr'
ここでYは税控除前の課税対象収入総額、rは現行税率、r'はロムニー案による引き下げ後の税率、dは税控除総額である。従って、(Y-d)rは現行の税収入である。ここで単純にrをr'
これに対するデロングの批判は、上の不等式の右辺はdrではなくdr'であるべき、というものである。r'はrより2割低いので、r'=0.24、dr'=1520億ドルとなり、不等式は成立しないことになる。
しかしながら、このデロングの批判が当てはまるのは、
(Y-d) (r - r') < dr'
のように左辺を税控除後の税収として計算した場合である。だが、フェルドシュタインは「The income-tax revenue in 2009 before all tax credits」をベースにしていると明記しており、それが誤りでない限り、比較対象としてはdr'ではなくdrを使うのが正しく、デロングの批判は筋違い、ということになる。