ウィキペディアは政治的に偏向しているのか?

という点について調べた研究をconversable economistブログが紹介しているEconomist's View経由)*1


以下はconversable economistブログが引用したそのまとめ部分。

To summarize, the average old political article in Wikipedia leans Democratic. Gradually, Wikipedia’s articles have lost that disproportionate use of Democratic phrases, moving to nearly equivalent use of words from both parties, akin to an NPOV [neutral point of view] on average. The number of recent articles far outweighs the number of older articles, so, by the last date, Wikipedia’s articles appear to be centered close to a middle point on average. Though the evidence is not definitive about the causes of change, the extant patterns suggest that the general tendency toward more neutrality in Wikipedia’s political articles largely does not arise from revision. There is a weak tendency for articles to become less biased over time. Instead, the overall change arises from the entry of later vintages of articles with an opposite point of view from earlier articles.
(拙訳)
結果を要約すると、ウィキペディアの政治的項目記事のうち古いものは民主党的である。そうした民主党に偏った用語の使い方は徐々に緩和され、両党派の用語をほぼ同等に使うようになり、平均的に中立的見解と同様になった。最近の項目記事は古い項目記事より圧倒的に数が多いので、それにより、直近では、ウィキペディアの項目記事が平均的に中立的になっているように見える。そうした変化の原因は明確ではないが、既存のパターンが示唆するところによると、ウィキペディアの政治的項目記事が全般に中立的になってきたのは、改訂が主因ではない。記事が時間の経過と共に偏りが小さくなる傾向は弱い。全体的な変化は、以前の項目記事とは反対の立場の項目記事が後から追加されたことによる。


調査対象となった項目記事は、2011年1月時点の"republican"もしくは"democrat"というキーワードを含んだ11.1万記事のうち、米国政治に関係する7万記事。それらの記事について偏向の程度を測定したのだが、その分析に当たっては、2005年の議会議事録に登場した1000個の言い回しを統計手法を用いて共和党的か民主党的かに分類した先行研究を利用したという(従ってそうした言い回しが含まれる記事のみ分析対象となったが、それは7万記事のうち2.8万だったとの由)。


傾向としては、市民権に関する記事は民主党寄り(指標値にして-0.16)で、貿易に関する記事は共和党寄り(0.06)だったという。その一方、外交、戦争と平和、中絶といった論議の的となる記事は中立的だったとの由。

*1:なお、該当研究はAER論文なので無料では閲覧不可とブログ記事では書かれているが、ここでWPが読める。