富裕層がケイマンに資産を移す理由

は節税ではない、という記事がSmartMoneyに上がっているThe Big Picture経由)。


シカゴの弁護士に取材したというその記事によると、世界のどこで収益を上げようとも米国政府の課税対象となる上に、米国内にも節税商品は多々あるので、節税のためにケイマンに資産を移すメリットはあまり無いという。もちろん資産隠しのような違法な目的で移しているケースもあるだろうが、それに対する罰則は国内での脱税に対するものよりも厳しいとの由。


では、なぜ富裕層はケイマンに資産を移すのか? 件の弁護士によると、その理由は昔ながらの理由と最近の理由の二つあるという。
昔ながらの理由は、法的リスクである。即ち、訳の分からない訴訟の標的にされて不当な判決が下された場合に、米国の司法が及ばないオフショアにある資産は保護できるから、とのことである。
最近の理由は、現政権の反富裕層的な雰囲気を警戒して、というものである。それが本当ならば、まさに「苛政は虎よりも猛し」を地で行く話だが、ただ、そうした理由に基づいて資産をオフショアに移すことにはあまり意味が無いのではないか、と記事を書いた記者自身は疑問を投げ掛けている。というのは、上述の通り米国政府の課税対象は世界に跨るので、その気になれば資産をどこに置こうとも――たとえ本人が亡命したとしても――IRSは追っ掛けてくるだろう、それならばむしろ金に投資した方が良いのではないか、との由。


なお、この記事はロムニーの資産公開がきっかけとなっているが、コメント欄では、ロムニーの場合は実際に個人退職積立勘定(individual retirement accounts=IRA)に掛かる税金をタックス・ヘイブンに設立されたblocker corporationsなる法人を用いて節税していたようだ、という指摘も見られる。その件はNYT記事USA Today記事等で既に報道されているとのことなので、この記事を書いた記者や取材先の弁護士は実は単なる勉強不足、ということになるのかもしれない(The Big Pictureのコメント欄では、こいつはこんなナンセンスな記事を書いて金を貰っているのか、という厳しい批判も見られる)。