米国経済を立て直すための9つのアイディア

ビジネスウィークが米国以外の国から米国経済を立て直す9つのアイディアを引き出しているEconomist's View経由)。以下はその概要。

  1. Fromドイツ
    • 住宅ローンの総量を最低限にまで引き下げる
      • 持ち家比率は米国がおよそ2/3に達しているのに対し、ドイツは46%と先進国中最低水準。住宅ローンの借り手の質が確保されているため、住宅価格変動が抑えられている。
      • ドイツの住宅ローンの頭金は最低で20%、通常は40%に達している。住宅ローン金利が税控除の対象とならないことと併せて、過剰な借り入れを抑止している。住宅ローン担保証券のローン資産価格比率は60%を超えることは無く、その証券は超安全資産となっている。またその証券のデフォルトリスクは銀行がすべて負うため、引き受けに慎重になるインセンティブが働く。
         
  2. Fromブラジル
    • 貧困層への援助
      • ルセフ大統領は6/2に「貧困のないブラジル」計画を発表*1
         
  3. Fromトルコ
  4. Fromカナダ
    • 意味のある課税(A Worthwhile Tax)
      • 2012年の大統領選を控えた米国で新税を唱えるのは異端の徒に近いが、カナダの売上税は参考になるのではないか。
      • オンタリオ州レイクヘッド大学のLivio Di Matteo*2は売上税とガソリン税増税財政問題解決に向け前進できる、と提言している。これぞWorthwhile Canadian Initiative*3
         
  5. From中国
    • グリーン技術に重点を
      • 中国の第12次五カ年計画ではクリーンエネルギーと環境に重点を置いている。
         
  6. Fromオーストラリア
    • 若者に金銭的余裕を
      • オーストラリアでは7/1から、年金生活者が働くインセンティブとなる「労働ボーナス」が改善される*4
      • ハーバード・ビジネス・スクールのMatthew Weinzierlは、このオーストラリアのやり方の趣旨に賛同しつつも、もっと直接的に、年齢によって所得税率を変えれば良いのではないか、と考えている(オーストラリアのようなやり方で高齢労働者に焦点を当てると、引退の決断という分析を複雑化する要因が入り込んでしまうため)。25歳から55歳まで税率を徐々に高くすることにより、米国の消費の0.6〜1.5%に相当する社会厚生利得が生じると推定される。
      • ただWeinzierlは同時に、このやり方は不況対策ではない――今の最大の問題は職の不足なので――、とも警告している。
         
  7. Fromタイ
    • ホテル代を安く!
      • 外出して消費することを促すため、2009年にタイは国内のホテルの宿泊料に対する税控除を倍にした。
         
  8. Fromシンガポール
    • 労働者を働かせ続ける
      • 日本の雇用調整助成金のような制度に加え、技術向上のための訓練への助成金も提供。中には現在の会社の職務に直接関係しない技術の習得を受けている労働者も。
         
  9. Fromイスラエル

また記事の冒頭では、ダウケミカルCEOのアンドリュー・リバリスの「People in the U.S. confuse big government and small government as the only two models. What we need is smart government.(米国の人々は大きな政府と小さな政府の2つのモデルしかないと勘違いしている。我々に必要なのは賢い政府だ)」という言葉を紹介している*5

*1:cf. この日本語記事

*2:cf. WCIブログに3月に加わった

*3:ちなみにこの言葉はWCIブログが語源ではなく、クルーグマンが指摘するように、元はFlora Lewis記者がNYTに連載していたコラムのタイトル(直近の同記者のwikipediaエントリではなぜかそれに関する記述が消されている)。この言葉はTNR誌のMichael Kinsleyがかつて最も退屈なヘッドラインに選んだことから有名になった

*4:cf. この日本語記事

*5:その後に「Countries are competing like companies more and more. In the U.S., we haven't caught up.(国同士はますます企業同士のように競争するようになっている。米国はその情勢に追いついていない。)」と続くのが気になるところではあるが。