という主旨の論文をミュンヘンのIfo研究所の研究員が書いた(Mostly Economics経由のEconomix経由)。それによれば、質の高い労働者は文化施設の整備された場所に住むことを好むので、オペラハウスのある場所に引き寄せられるとの由。また、そういった地域は経済成長が2%高まるという。
論文では1800年前後に建設された29のオペラハウスを対象に分析を行ったが、その際、
- 産業革命以前に建設された場所だけを対象にすることにより、経済成長の結果としてオペラハウスが建てられたという逆の因果関係の可能性が入り込むのを排除した。
- 大学や港湾といった、経済成長の原動力となり得るその他の要因について修正を掛けた。
- オペラハウスが無いことを除けば似たような特性を持つ地域を比較対象として分析した。
そのようなコントロールを実施した後も、オペラハウスは有意に説明力を持つという結果が得られたとのことである。
オペラハウスはバロック時代に貴族たちが自らの権勢を誇示するために借金を重ねてでも競って建設し、期せずしてケインズ的経済政策を先取りすることになったが、この論文によれば、それ以外にも思わぬ効用をもたらしたわけだ。
論文の著者たちは、そのことを現在のドイツのメルケル政権の緊縮策と重ね合わせ、質の高い労働者を惹き付けることを考えれば、文化への支出を削減するのは間違いかもしれない、と警告する。ただ、その一方で、あまり文化に金を使い過ぎると、それに関心の無い企業や個人の流出を招くこともあり得る、とも警告している。
ちなみに、Mostly EconomicsのAmol Agrawalは、文化施設が人を惹き付けるのはドイツのような高所得国に当てはまる話で、インドでは当てはまらないだろう、と“衣食足りて礼節知る”を地で行くような感想を漏らしている。