昨日のエントリに書いたように、経済学を巡る議論では、しばしば経済学者の「コンセンサス」や「標準的見解」をデウス・エクス・マキナよろしく持ち出して、それに反しているからお前は間違いだ、という形で決着を図ろうとする人が多い。しかも、良く聞いてみると、そのコンセンサスなるものの内容が人によって微妙に違っていたりする。
そうした話を聞いていると、つい、この短編の最後を連想してしまう。
マイノリティ・リポート―ディック作品集 (ハヤカワ文庫SF)
- 作者: フィリップ・K.ディック,Philip K. Dick,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1999/06/01
- メディア: 文庫
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(以下ネタバレあり)
「自分でもまだよくわからない。少数報告はまちがっていた。そうですね?」
アンダートンはおもしろそうにたずねた。「どの少数報告が?」
ウイットワーは目をぱちぱちさせた。「そうか、そういうわけなのか。もっと早く気がつくべきだった」
・・・
「そもそもは三つの少数報告があったんだよ」彼はウイットワーの混乱ぶりをたのしみながら、そう説明した。
・・・
「どの報告もそれぞれちがっていた」とアンダートンは結論を述べた。「どの報告も独自のものだった。ただ、そのうちのふたつが、ある点では一致していた。・・・それが多数報告のような幻想を生んだ。はっきりいってそうなんだ――それは幻想でしかない。」