行政管理予算局の経済予測には上方バイアスがある

という、さもありなん、な結果が、ケイトー研究所のCato Journalという、内容からしてさもありなん、なジャーナルに掲載された論文で報告されている(H/T Mostly Economics)。論文のタイトルは「Forecast Bias of Government Agencies」で、著者はカリフォルニア州立大のRobert Krol。
以下はその結論部。

This article evaluates the accuracy of the CBO, OMB, and Blue Chip Consensus forecasts of real GDP growth. Assuming a symmetric loss function, the unbiased forecast hypothesis is rejected for the five-year forecast, but not the two-year forecast. For the two- and five-year horizons, information efficiency is usually rejected. However, tests for loss function asymmetry suggest these results are unreliable. The proper loss function in this case is a flexible loss function. Estimates under a flexible loss function suggest that each agency’s loss function is asymmetric. These estimates indicate a significant upward bias in the OMB forecast. This is interpreted to mean executive branch political pressure influences the forecast. In contrast, both the CBO and Blue Chip forecasts have a downward bias. The CBO economic outlook is consistent with the private sector forecast. In contrast to previous work, once the asymmetry of the loss function is taken into account, government forecasters appear to use information on the economy efficiently in arriving at their GDP forecasts. These results differ from most of the literature on government forecast evaluation. By addressing the issue of intentional forecast bias, they highlight the roll political pressure and institutional design may play in economic forecasts.
(拙訳)
本稿では、議会予算局(CBO)、行政管理予算局(OMB)、およびブルーチップコンセンサスの実質GDP成長率予測の精度を評価した。対称的な損失関数を仮定したところ、予測が不偏であるという仮説は5年予測について棄却されたが、2年予測については棄却されなかった。2年と5年の予測期間については、情報が効率的に利用されているという仮説は概ね棄却された。しかし、損失関数の非対称性を検証したところ、以上の結果は信頼性が低いことが示唆された。このケースにおける適切な損失関数は柔軟損失関数である。柔軟損失関数を用いた推計では、各機関の損失関数が非対称的であることが示唆された。その推計においては、OMB予測の有意な上方バイアスが示された。このことは、行政機関における政治的圧力が予測に影響することを意味していると解釈できる。対照的に、CBOとブルーチップの予測は共に下方バイアスがあった。CBOの経済展望は民間部門の予測と整合的であった。従来の研究とは対照的に、損失関数の非対称性を考慮するならば、政府の予測者がGDP予測を打ち出す際には経済に関する情報を効率的に活用しているように思われる。この結果は、政府予測の評価に関する大部分の研究とは異なる結果である。意図的な予測バイアスの問題を俎上に載せたことにより、今回の結果は、政治的圧力と制度設計が経済予測において演じるであろう役割*1を浮き彫りにした。

論文の本文では、CBOが民間予測に近くなる理由を以下のように述べている。

  • 大統領の管理下にあるOMBと異なり、CBOは個人や特定政党ではなく議会の管理下にあり、より独立性が高い、という制度設計上の違いが存在する。CBOは、相異なる政治目標を持つ両党の議員に対し説明責任を持つ。独立性が高いため、客観的な予測を出すことに伴うコストが低い。
  • CBO予測がコンセンサス予測から大きく乖離すると、党派性があるように見える。コンセンサスに近ければ、議会での弁明が容易になる。また、外部のアドバイザーの存在もコンセンサスに近付ける方向に働く。

一方、OMBが楽観的な予測を出すのは、政治コストの高い支出削減や増税を避ける力が働くためとの由。

*1:ここではrollはroleのtypoと見做した。