ゼロ金利政策の終焉?

FT alphavilleが「ゼロ金利政策(ZIRP)が終わったことに気付いたかい?(Do you notice the end of ZIRP?)」という記事を載せている

記事を書いたポール・マーフィー(Paul Murphy)記者がその証拠として提示するのは以下のグラフ。

2008年12月に導入された目標金利範囲は0-0.25%だが、最近のFF金利は20ベーシスを超えることが常態化しつつある、とマーフィーは指摘する。つまり、米国は日本化することをやめたのだ(America has stopped turning Japanese.)、と彼はその状態を表現する。

FTでは既に今月初めにマイク・マッケンジー(Mike Mackenzie)記者が、2月に公定歩合を50から75bpに引き上げた後にFF金利がじりじりと上昇し始めたことを報じているが、あまりに微妙な政策変化なので、今のところ彼以外にそのことを報道した人はいないようだ、と指摘してマーフィーは記事を締めくくっている。


ただ、マーフィーが記事の冒頭で言及したように、水曜日に発表されたFRBの声明は、これまでとは実質的な表現の変化はない。即ち、例外的な低金利(exceptionally low levels of the federal funds rate)を「for an extended period」継続する、としている。


Economixは、この表現は13ヶ月使われているが、では具体的にはどのくらいの期間を指すのだろう、という疑問を投げ掛けた。

それに答えたのがCalculated Riskで、FRBが表現を変えてから6ヶ月後だろう、と推測している。その根拠は、2003年の「considerable period」という表現の先例である。FRBが最後にその表現を使用したのは同年12月だったが、翌2004年6月に金利引き上げを実施した。次回のFOMC会合は6月なので、利上げは早くても12月だろう、とのことである。
一方でCalculated Riskは、失業率に基づいた政策変更時期の予測も立てている。90年代初めには、失業率がピークの7.8%を付けてから金利引き上げまでFRBは1年半待った(引き下げ時の失業率は6.6%)。2003年の失業率のピーク(6.3%)から金利引き上げまでの間隔は1年である(引き下げ時の失業率は5.6%)。今回の失業率のピークは昨年10月なので、18ヶ月を足すと2011年前半ということになる。Calculated Riskは、「extended period」の表現が外されるのは失業率が9%近くまで低下してからであり、実際の金利引き上げは失業率が8%を切ってからだろう、という見立てを示している。


ちなみに、Economist's Viewの4/28エントリによると、元FRBのビンセント・ラインハート*1も、ミルケン研究所のセミナーで、利上げ時期について概ね同様の見解を示したという。即ち、年末か、もっとありそうなのは来年の早い時期、と予測したとのことである(来年5月がもっともありそう、とのこと)。
なお、WSJ記者からの伝聞としてThomaが書いているところによると、「extended period」という表現はそもそもビンセントのFRB時代の発案、との由。

*1:wikipediaによるとカーメン・ラインハートの夫。wikipediaのカーメンの項では、このブログエントリがソースとして示されている。