日本の奇妙な失業対策

と題し、少し前にFreakonomicsが日本政府の日系人への帰国支援金支給政策を取り上げている(日本のブログではここでそのエントリが紹介されている)。


取り上げられた政策の内容は厚生労働省のHPで読めるが、その別添のpdfには以下のように書かれている。

厳しい再就職環境の下、再就職を断念し、帰国を決意した者に対し、同様の身分に基づく在留資格による再度の入国を行わないことを条件に一定額の帰国支援金を支給する。
※ なお、入管制度上の措置として、支援を受けた者は、当分の間、同様の身分に基づく在留資格による再入国を認めないこととする。

この再入国の条件が、Freakonomics、およびそこからリンクされたTIME記事では批判の的となっている。この条件は、制度の悪用(一時帰国に利用する等)を防ぐためと思われるが、「帰国支援金」でぐぐってみても批判の声が目立つ。
実際の申請状況については、直近のニュース記事で東京新聞が群馬の様子を伝えているが、低調だという(なお、この東京新聞記事では、支給の条件について上記の厚生労働省のHPより少し詳しく説明されているので、以下に引用しておく)。

<帰国支援金> 厚生労働省が4月から実施。申請者本人に30万円、家族に20万円を支給。国が旅行会社などに直接航空機代を振り込み、残金は帰国後、母国の金融機関に米ドルで振り込む。日本国内では受け取れない。受給すると就労制限がない日系人としての資格が消滅し、再入国が難しくなる。


ただ、Freakeconomicsのエントリのコメント欄では、別にこれは日本特有の政策ではなく、他の国にも例があることが指摘されている。「rashad」氏による直近のコメントでは、エントリに見られる日本蔑視の論調を厳しく批判すると同時に、問題の政策を以下のように擁護している。

the fact is, many of these folks are being laid off and cant find jobs–but they also cant go back home because they cant afford it. the citizenship was granted on basis they will stay for an indefinite period of time in japan, and if that’s not the case, it makes sense to exchange it for money to go back to their origin countries. its not forced, and these folks get the same social security as do any other japanese, so whats the problem? at least the government is trying to help.

(拙訳)実際のところは、多くの人たちは解雇され仕事が見つからず、資金の余裕がないため帰国することもできない。市民権は日本に定住することを前提に与えられており、その前提がなくなれば、帰国費用提供と出身国への帰国を引き換えにするのは理にかなっている。それは強制ではないし、それらの人々は日本人と同じ社会保障を得ているのだから、どこに問題がある? 少なくとも政府は援助しようとしているのだ。


他の国の同様の政策例としては、たとえばこの4/28WSJ記事ではチェコを取り上げている。チェコの場合は、帰国費用に加え、500ユーロを支給し、15歳以下の子供がいればさらに250ユーロを加算するとのことだ。2月に施行され、当初は8ヶ月で2000人の見込みだったが、既に1345人に適用されており、内務相は政策を成功と見なしている。現在は合法移民のみ対象だが、非合法移民にも拡大する予定との由。
ちなみにチェコの場合、移民の出身国上位5位はスロバキアウクライナベトナムポーランド、モンゴルの順になっているが、プログラムの対象となった人のうち66%はモンゴル人だという。というのは、そもそもEU加盟国の場合は域内で自由に行き来ができるので、プログラム対象者を非EU加盟国出身者に絞っているため。また記事は、ベトナムとモンゴルを含む5つの非EU加盟国市民に対し、チェコ就労ビザの発給を一時的に(ただし期限は明示されていない)停止したことを報じている。
WSJ記事は日本とスペインも触れているが、スペインの場合、3年間戻ってこないことを条件に、6ヶ月の失業手当(平均14000ユーロ)を支給するとのことだ。昨年の11月の施行以来、約4000人に支給されたという(政府の目標は10万人)。
記事は、いずれ景気が回復したらまた移民の力が必要になるであろうこと、およびそのことをチェコ当局者も認識していることを指摘している。記事の最後は、帰国支援プログラムの冊子を移民に配布するチェコ当局者の「去って欲しいから配っているわけではない。必要になる時に備えて情報を提供したいだけだ」という言葉で締めくくられている。