マンキューブログのこのエントリと、それに対するEconomist's Viewの反論を読んで、あることに気づいた。
オークン則の係数と、乗数効果の支出乗数が一致していると、労働人口一人当たりの平均GDPと、追加雇用者一人当たりの必要財政支出額が一致する。
ここで、オークン則の係数がaということは、失業率が1%増加するごとに、GDPギャップがa%増加するということである。
一方、支出乗数がbとは、政府の支出1ドルごとにGDPがbドル増えることを意味する。
以前のエントリで紹介したクルーグマンの数値例を例に考えると、次のようになる。
労働人口を1.5億人とすると*1、失業率ギャップ=3.5%を仮定したので、潜在失業者数は
1.5億人×0.035=525万人
となる。オークン則の係数をaとすると、これは、GDP15兆ドルとして、
15兆ドル×0.035×a=5250億×aドル
のGDPギャップが存在することを意味する。
このGDPギャップを埋めるために必要な財政支出額は、支出乗数をbとおくと、
5250億×a÷bドル
となる。
結局、525万人の失業者を救うために5250億×a÷bドルを支出するので、一人頭の財政支出額は
10万×a÷bドル
となる。
Economist's Viewで仮定されているように、a=bならば*2、これは10万ドルとなる。
それに対し、労働人口一人当たりGDPの平均値は、15兆ドルを1.5億人で割った10万ドルである。
つまり、a=bを仮定すると、両者は一致することになる。
なお、マンキューは、オバマ案で予定されている財政支出額7000億ドルを、その案で目標としている雇用者増250万人で割り、28万ドルという数値を弾き出している。そして、この28万ドルを上記の平均GDP=10万ドルと比較し、乗数が10÷28=0.36である、という議論を展開している。上述より、これはb÷aを推計していることになるので、これを乗数そのものと見做しているマンキューは、オークン係数が1であることを暗黙に仮定していることになる。
マンキューは、オバマ案について、
- 財政刺激策は報道されている7000億ドルより実は小さい。
- 雇用者増加数を低めに見積もっている。
- 財政支出乗数を低めに見積もっている。
のいずれかである、と難じているが、もっと経済学的な批判をするのであれば、一言、
- オークン係数が支出乗数の2.8倍であると仮定している。
という指摘をすれば良かったものと思われる。